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[コメント] 17歳のカルテ(1999/米)

確実に増えています。
uyo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







かつて、この映画ができたころの日本では、この「ボーダーライン」といったタイプの人はまれで、周囲にいる人(ノンボーダーといわれる)のキツイ体験は、なかなか経験していない人にはわからない、という、特殊な共通言語だった気がします。

最近は、かなり増えた気がします。間接的な印象ですけれど。この、「愛や関心や感謝を、その相手を懸命に傷つけようとすることでしか表現できない病」は。しかしそのとき、人知れず確実に実際は「自分自身」を、誰よりも一番傷つけている。表面的には、外からはそうは見えないがゆえに、ボーダーラインは、身近な人々から「わがまま病」などと糾弾され、嫌われ避けられがちです。そして、わがままといえば、確かにわがままなのです。なにごとにもリスクを覚悟することを負えない弱さから、逃れられない精神障害なので。同時に、ボーダーラインの人は、とても献身的な面があったりするのですが。

愛されるほう(ノンボーダー)も、その障害を抱えている人に対して、同時に深い愛情があるならば、その相手ののたうちまわるような「苦しみ」と、全てを得ようとしていながら何物をも得ていない、という「虚無感」を理解し、自分と相手の感情をコントロールして、いっしょに人生を乗り切っていこう、とすることができます。共依存に陥らないように距離感に気をつけながら。そんな風に恵まれた「相思相愛」の姿は、稀有ではありますが、周囲に何件か見てきました。

増えたのはどうしてでしょう?公害の弊害?添加物の作用?多分そういった形での、苦しんでいる本人の責任の及ばない「脳の機能障害」なのではないかと思います。

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(追記前のコメント)現実の精神医療のことを実際によく知らない、と言う事で、何だか点がつけられません。別にマフィアの事を知らなくても、マフィア映画には点がつけられるのですが。

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ハゲ(失礼)のお医者さんの、主人公との会話は、相手を決め付けていて、自分自身の意見を述べ過ぎていて、良くないなあ、と感じました。あれが60年代での対応、と言う象徴なのでしょうか。女性の看護師やお医者さんの方が、基本の流れは相手に任せつつ、自然な舵取りをしているような気がします。

最初は、観ているだけで船酔いのような感覚に襲われて、これは最後まで観続けられないかもしれない、と不安でした。けれど主人公が、だんだんと「自分自身の治癒力」によって治ってゆく感じが、看護師によって、バスタブに突っ込まれ、「あなたは治っている」と言われる前あたりからなんとなくわかるのは、演出と、演技の力ですね。

同時に、最初は主人公よりも正常に感じたリサの重症性が際立って来たと思います。他人を激しく傷付ける事で、「同じ大きさの傷」を自分の中に飲み込み続ける彼女のあり方は、確かに深刻だと思います。そんな人に対して、私にはどう対処したらいいかわかりませんでしたが、「マニキュアを塗ってあげる事」が一つのヒントなのか、と思いました。どんなに噛み付いてきても、相手は優しく包まれたがっている、と言う事なのかと。

個人的に一番印象的だったのは、クライマックス。治った主人公が、周囲の人を「評価」して、リサに「高飛車だ」と責められるのが、わかるなあ、と思いました。治癒し、苦しまなくなり、「正常」となる事は、ある意味自分の手を汚せるようになり、善から悪になることでもあるのだ、考え方が美しく、純粋である事が、苦悩の原因となっているからこそ、その「間違った正しさ」からどうにも逃れられないのではないか、と言う風に解釈しました。

その前から、リサを「可哀相だ」と思っていた自分だったので、主人公が彼女に「哀れね」と言ってしまった時は、どきりとしました。と言う事で、自分で自分の意見や言葉づかい(「〜してあげる」など)に終始自信がないので、採点は保留です。実際にこれらの病と戦っている人に、「こんなものじゃない」と言われたら(実際間違いなく言われるでしょうし)、返す言葉がないからです。

けれど、健康な人でも、そうでない人でも、高飛車な高慢ちきも、攻撃的な心弱い者も、生きる事に不安を持って、日々を過ごしている少女たちへのなにがしかの応援歌として、この作品があればいいなあ、と思います。(なんか母の心境だ。まあ、タイトルの倍は生きているし。)

(評価:★0)

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