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[コメント] ローズマリーの赤ちゃん(1968/米)

見えざる粛清に徹底的な監視、そして個人崇拝へと至る、オカルト信仰とスターリズムの紐帯をなす数々の直喩と不信に満ちた世界で徐々に衰えていくローズマリーの満身創痍の姿。かつてスターリズムに蹂躙された衛生国と像が重なり、そこで肝となる「胚胎」がそれに拍車をかける。
山ちゃん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ここで、この映画の肝要である「胚胎」について言えば、それはローズマリーの自由を束縛するものとして機能するとともに、もう一つ、恐怖という形で効果を与えている。

不信に満ちた世界では、そこで民衆らが寄る辺とするもの、それはすなわち血縁関係で結ばれた者である。そしてその深い絆である血縁関係までをも蝕もうとする、腹を痛めて生んだ赤子が実は悪魔の子であったという衝撃の結末。最後の寄る辺となるものまでをも蝕むこの同化政策。そしてそれでもなお、この赤子を寄る辺として生きていこうとする、この救いようがない残酷さ。この恐ろしい戦慄に全身を貫かされる。

都邑の佇まいの俯瞰ではじまり、最後にまたそれで締めて幕を引く。そこで鉄のカーテンに覆われているかのように屹立するアパート。ここで何が行われているのか誰も気づかない。さらにそこで流れる子守唄のような音楽。その歌声から、何ともやるせない、抵抗を終えた後の諦観のようなものを感じた。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)Orpheus けにろん[*] DSCH[*] moot

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