[コメント] 真田風雲録(1963/日)
戯画化された空間の中で展開するミュージカル時代劇(というかスプーフ時代劇)だが、マキノや沢島忠が作った幸福感に溢れるミュージカル時代劇とは全く異なり諦念でいっぱいになる。しかしそれは軽やかな諦念だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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茶化された演出の中にいかにも加藤泰らしい濃密な感情描写が忽然と現れ呆然となる。特に中村錦之助と渡辺美佐子(霧隠才蔵役!)のラブシーンで見せる口唇のアップカットの艶かしさ。ラブシーンと云っても殆ど絡みを見せないのだが、この口唇のカットがあるからこそ、渡辺美佐子が妊娠し堕胎する納得性が生まれるのだ。他のカットと不調和でこゝだけ突出していたとしても、これぞ映画だと思わせる演出じゃないか。
合戦シーンは冬の陣、夏の陣のシーンよりも冒頭タイトルバックの横移動で捉えられたカットが凄まじい迫力で特筆に価する。ミッキー・カーチスが先導する音楽シーンも良いし、錦之助と佐藤慶のテレパシー対決も面白いし、ラストの草原を行く錦之助を突き放した空撮も奇跡的なカットだし、他にも見所は沢山あるのだが、しかし真田幸村を演じる千秋実の飄々とした存在感は素晴らしい。やっぱりこの真田幸村の死に様こそ、この映画の白眉。
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