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[コメント] スポンティニアス・コンバッション/人体自然発火(1989/米)

トビー・フーパー渾身の超感動作。凄まじい。
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







美術へのやや珍妙な拘りで知られる(?)フーパーだが、本作もまた然り。何と言っても、終盤に登場するあの館!!煙を体から吹きながら長イスに弱々しく腰掛けた主人公の背後、廊下の奥でまるで『悪魔のいけにえ』のような引き戸がスーっと開き、電動車イスに乗った黒幕がやはりスーっと現れるあのシーンの異様さ、不気味さ。そして、哀しみ。

そう、この作品は、ひょっとすれば、クローネンバーグ作品とでも見間違えそうな(なんて言うと、あちらのファンに怒られるだろうが)深い哀しみに全編、全ショットが彩られている。科学の生み出したものが科学の計り得る域を超え、未知なる「自然」となる科学の人類に対する反逆。それをもなお畏れず、我が物にせんとする愚かで醜き人間の欲望。その全てを生身の体と心に生まれながら背負わされてしまった1人の男。物語は悲痛を極めて行く。しかし、フーパーはその絡まり行く怒りと哀しみと苦しみ、物語の全てを最後の最後の瞬間で1つの愛へと一気に昇華させる。多くの要素を含んでいるが、物語は決して複雑でも煩雑でもない。

迎えるラストシーン、もはや破滅以外あり得ない男の壮絶な最期、壮絶な愛の成就。怒りと哀しみでズタズタに崩れて行く男が今まさに同じ運命を辿らされようとしている女に(文字通り)救いの手を差し伸べ、その運命を(文字通り)一手、我が身で引き受ける。本物のカタルシス。映画。泣いた。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)マリオ・フーパー ジョー・チップ[*] ナッシュ13[*]

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