[コメント] 荒野の決闘(1946/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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とは言いながらも、それはあくまでも全体を通しての感想であって、本作が駄作であるなどというつもりは毛頭ない。それどころか本作は、一見どうでもよさそうなシーンにこそフォード作品らしい輝きが見られる、観れば観るほど深入りしていく魔力をもった作品である。
その中でも特に好きなシーンは、日曜日の朝、鳴り響く鐘の音につられて皆が教会建設のために集い、ダンスを楽しむところ。ここはドク・ホリデイへの思いを断ち切り町を出ていこうと決心した傷心のクレメンタインが、改めて町とその人々、そしてワイアット・アープへの思いに気付くきっかけとなる大切なシーンであるが、このシーンに溢れかえる幸福感は正直異常なほどである。
また何度観ても気になったシーンとしては、誰もがその名を上げるために命を狙っていたとされるドク・ホリデイのあっ気ない最期。これは彼の最後の一発を効果的なものとする演出ではあったのだろうが、それにしても、咳の音を相手に気付かれ致命傷を負うなどというのは拍子抜けするほどで、私には長年これが不思議で仕方なかった。
しかし今回、改めて本作がフォードの大戦後初の監督作品であると確認したとき、これらのシーンは大戦でまさにあっ気なくその命を絶たれたであろう大切な仲間たちへのレクイエムであり、そんな悲しみを抱えた、残された者たちへの希望の讃歌でもあったのだろうと思い至った。そして、であるからこそ本作は、国や敵味方という恩讐の思いをこえ、多くの人々に愛される作品となっのであろうという思いにもなった。
そのような見方は、本来の映画の楽しみ方からは外れたものかもしれない。が、少なくとも私は、たとえそれが私だけの思いであっても、そのように思えたからこそさらに本作が好きになったのである。
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