[コメント] バトル・ロワイアル(2000/日)
この映画は「物凄く気持ち悪かった」です。 この映画を「悪趣味極まりない御伽噺」だと言う人もいますが、そうも断言できないような気がするのです。 私は、この「物凄く気持ち悪かった」感情に従って、この映画について考察してみました。
��.価値観に準拠する「殺人」
この映画における「殺人」の捉え方について考察してみます。 事象についての人の考察は、社会的見解と個人的見解の複合によって判断されますが、「殺人」に対する見解は、個人的見解よりも社会的見解への準拠を強要される行為でしょう。 例えば、江戸時代の敵討ちは「誉れ」であり、戦争では「任務」であり、殺人が肯定されています。同様に、この映画では、「殺人」は「国家のルール」という社会的見解に準拠する世界が描かれています。 歴史や現在起きている様々な事件を併せ考えると、バトルロワイアルにおける「殺人」の捉え方は全く現実的な話なのです。
��.「殺人」というメタファー
次に、この映画における「殺人」の意味について考察してみます。 この映画では、私達の社会において否定的であり刺激的な「アイテム」である「殺人」を使って社会的価値観と個人的価値観についての再考を私達に訴えているのではないでしょうか。つまり、様々な事象について 「正しいと考えている自分の見解は正しいのか」 「社会の通念とされている見解は正しいのか」 「正しいという指標は何をもって正しいと考えるのか」 答えは無いのですが、自分の中で判断することはできます。判断するためには、多くの判断材料を揃えなければなりません。そして、柔軟な思考と余裕を持っていなければなりません。 （こう考えると、映画や本に対する世論が白熱したのは狙い通りだったのでしょうが、「殺人肯定」という内容ばかりに議論が集中してしまった感があります。しかし、現状社会では多くが否定的な「殺人」ですら、何時、どんな言い訳で肯定されるか、まったくもって危うい通念ですよね）
��.中学生である理由
社会的価値観と個人的価値観は互いに相関関係にあります。つまり、社会的価値観は個人的見解の集合や強要により形成され、個人的価値観は社会的見解に大きく影響され形成されます。 事象を判断する際、幼年期には社会的価値観の影響を大きく受け鵜呑みにする場合が多く、成年以降は社会的価値観を視野に入れつつも個人的価値観を重視する場合が多い傾向があります。（生徒が命令に対して様々な反応をしたように）個人差は当然あるものの、この映画では、中学生前後の年齢を社会的価値観と個人的価値観の交差ポイントとして捉えているのではないでしょうか。社会的価値観を理解しつつある年齢であり、まだ凝り固まっていない個人的価値観を持つ世代だからこそ、人々に訴えられる主人公となりうるのでしょう。
（おまけ）学校という戦場
学校という場所は私にとって楽しい場所でもあり、恐い場所でもありました。 私は小学校高学年から中学校あたりの時代は、特に深刻ないじめや事件に遭遇することはなかったものの楽しい学校生活の裏で、集団や仲間や先生に対して多くの神経を使っていました。いろんな人と話してみると同じ意見を持つ人が多いことに吃驚します。この映画では、「楽しい学校生活」の裏に潜む闇を、「殺人ゲーム」という極論で描き出したのではという気もしました。
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