[コメント] 暗殺の森(1970/伊=仏=独)
例えば、踊るように逃げまどうドミニク・サンダを追ったあのため息が出るような移動撮影があるというだけでも、この映画は「傑作」と呼ぶにふさわしい作品であると思う。
筋書き自体は他愛もないものだ。幼少期のトラウマから社会に順応するためファシストとなった青年の、自己の理性との葛藤を描くというただそれだけのもの(と、理解しているのだが…)なのだが、何と言っても圧巻なのはその映像美。ヴィットリオ・ストラーロ撮影の、青を基調としたその魔法のような画に、ただただ酔いしれた2時間弱だった。
しかもこれがただ美しいだけの画に止まっていないところが素晴らしい。『1900年』等の諸作もそうだったように、その画が夢にまで出てきそうなほどの美しさなのは勿論だが、その美しさが映画として機能している画の中にしっかり溶け込んでいるというか、とにかくこの作品を観ていると、「映画」を観ていることの悦びが満ち満ちてくるのだ。
ベルトルッチの映画は元々大好きだったのだが、最近全然観ていなかったことを反省しつつも、この恐るべき傑作を前にすると、その反省が後悔に。うーん、やはり彼は違う。これほどの映画的興奮を与えてくれる作家は、そうそういるものではないと改めて感じ、平伏した。
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