[コメント] BROTHER(2000/日=英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この域に達した映画監督はなかなか少ない。
思えば北野作品に共通するロードムービー的な部分は、彼が芸人時代に浅草で育ち、売れるようになって次から次へと旅をしていた時代と、その時代に出会った人物を投影しているのだと思う。
前作で北野ブルーから脱却し、本作においても新たな映像を取り入れるなど見事な出来だったと思う。オープニングなどで見られる映像の傾斜など、所々に新たな一面を垣間見ることが出来る。
それと銃声の効果。ソナチネあたりから徹底してセリフの音を圧縮し、銃声だけが観客の胸に刺さるほど大きく反響する。
安穏として生きる日本人、そしてアメリカ人に対して共通した銃弾を撃ち込んでいるようにも感じられる。
日本人と黒人をアメリカで共通の枠組みにおさめたのもなかなかユニークだと思う。
アメリカ社会を牛耳るアングロサクソンやマフィアに代表されるイタリア系アメリカ人をことごとく撃ちまくるシーンの数々は、アメリカ人には少し刺激が強すぎるかもしれない。
しかしながら、これは人種の映画ではなく、兄弟の映画だ。日本人の任侠道をモンタージュし、その日本からはずれた男がアメリカでその道を貫こうとする姿を描いており、人種の表現はその一部でしかない。
映画の全編を貫く淡々とした映像は紛れもなく日本映画であるし、そうした映画がアメリカで制作され上映されるとうのはショッキングなことだと思う。
興行的なことは分かりかねるが、恐らくアメリカなどより、ヨーロッパで評価される映画ではないか。
アメリカでの撮影であるにもかかわらず全くその感じが出ていない。不思議な映画だ。
ジェレミー・トーマスの参加も嬉しい。『戦場のメリークリスマス』、そしてベルナルド・ベルドルッチの一連の名作を手がけた彼がこの作品をプロデュースしたことは秀逸である。『戦場のメリークリスマス』のラストシーンから17年の歳月がここまでさせたのか。北野武はもしかしたら大島渚をつぐ人なのかもしれない。いかにも二人は挑戦的である。
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