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[コメント] 現金に体を張れ(1956/米)

面白い。鼻血が出るほど面白い。なんという構成の妙か。しかし撮影・演出の創意という点では、『突撃』はもちろん『非情の罠』にも劣ると云わざるをえないのがつらい点だ。
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もちろんキューブリックの演出にしてもルシアン・バラードの撮影にしても水準を大きく超えた出来なのだが、それはほぼ「古典的ハリウッド映画」のスタイルに収まったものであるとも云える。もちろんそれが端的に悪いというわけではまったくなく、構成が複雑なだけに個々の演出においては「分かりやすさ」に徹するという選択をしてみせたキューブリックのクレバーさはやはり評価されてしかるべきだ。

短い時間でキャラクタに厚みを持たせる演出がなされていることも見逃せない。ジェイ・C・フリッペンスターリング・ヘイドンに見せる度を越した父親的愛情(ホモセクシャル)。スナイパーのティモシー・ケリーはヘイドンとの交渉のときにずっと小犬を抱いて撫で回している。バーで大暴れするレスラーはチェスとおしゃべりが大好き。

また、エライシャ・クックJr.が引き起こす一瞬の殺戮劇や「偶然」に支配されたラストシーン(犬のせいで札束が巻き上がり、逃げようと思ってもタクシーが捕まらない)が、「神」によるヴォイスオーバー・ナレーションと相俟ってキューブリックの非情さを際立たせている。この非情さはむしろ前作の『非情の罠』には見られなかったもので、前作と本作を合わせればキューブリックのエッセンスはほぼすべて見てとることができる。

(評価:★4)

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