[コメント] スターリングラード(2001/独=米=伊=アイルランド)
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この映画の視点にどこか赤軍を軽蔑する傲慢さを感じる。 イヤな言い方ではあるが、記号化された野蛮人と野蛮人の戦いのような描かれ方に不快さを感じる。
戦闘シーンがプライベートライアンと比較されるようだが、圧倒的な違いは、同じ理不尽さの中にも作る側が自らの国の兵を描いた事に、緊迫感があった。 隣の人が死んでいく事に、諦めを感じさせる怖さがあった。一瞬でもつながりのある人間が死んでいくのだ。だから国は違っても観る側にもギリギリの緊張感を迫っていたのだと思う。
一方この映画で、じゃんじゃん人が死んでいく姿は圧倒的に他人の視点だ。 イカれた人間として描かれるソ連の指導者に駆り立てられて、前も後ろも敵の中、顔のない兵隊達がただ突進して何もせずに死んでいく。死んで行く人達に顔がなさ過ぎる。映像がどうこうよりも根本的にそこは雑である。
悲惨きわまりないスターリングラードの戦いは、本当にそうだったのかも知れない。おそらく兵隊は突撃マシーンのような扱いだったのかも知れない。
でも、それぞれの立場の論理があるはずだ。どんな無茶な論理であっても、それはかならずあるはずだ。それを描く事を怠って、記号化された戦闘の世界の中に、エンターテイメントの要素をずるく仕込んでいくこの映画の姿勢に、かなり不快さを覚える。
「薔薇の名前」しかり、場所を構わずにセックスするのは、アノー監督のいいところ。したけりゃシーツの上まで行く必要ないもんね。無論、ここに綺麗なシーツなどはない訳だが。
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