[コメント] くちづけ(1957/日)
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というわけでこれはちょっと速すぎる映画なのだが、速いというのは物語の展開もそうだし、作中人物の個々のアクションもそう。確か映画が始まって二〇分くらいで海水浴のシーンになるのだけれども、そこに至るまでに川口浩と野添ひとみの拘置所での出会い・父小沢栄太郎との面会・野添の支払いの肩代わり・バスまで追いかけっことバス内での悶着・競輪・友人からオートバイかっぱらい・バイクで海へゴー・水着購入、などが描かれていて(あ、弁護士との面談なんかもありましたね)、要するに無茶苦茶速い。作中人物について云うと、主役にふさわしくとりわけ川口の動きが超速い。この過剰な速度は物語内の何がしかによって生み出されているというより、まずはじめに速度があって、その速度こそが物語を生んでいると云ったほうが適当ではないかと思える。心理があって、物語があって、キャラクタが動くのではない。速度の論理に基づいてまずキャラクタが動き出し、心理も物語もその後からついてくる。ここで心理/物語とは「理由」だ。ラスト「どうして小切手なんかくれるの?」という野添の問いに対し川口は速度の論理に則ってくちづけを返し、「これで理由ができた」と嘯く。反-心理主義の領域にまで踏み込んだ「速度」による「理由」(=心理/物語)の捏造。
と、自分の中でも論の整理がついていないことを云い散らしてしまったけれども(「速度の論理」って何よ?)、とにかくこの映画は速いんです。速すぎます。雨も降りすぎ。
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