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[コメント] M(1931/独)

警察の権威とメンツとずる賢さ。生き残りの手段を選ばないアウトロー衆のエゴ。法と病という正論の楯に守られた建前主義。疑心暗鬼うず巻くなか“正義”の意味が揺れ動き、どこへたどり着くやら分からない結末に、市民(観客)が翻弄され続ける怒涛の権威批判映画。
ぽんしゅう

冒頭の無邪気な子供の邪鬼に満ちた歌。多用される誰もいない「場所」の不気味さ。大衆の警戒心と恐怖心と好奇心を煽る街頭に貼りだされた手配書。茫洋とした殺人鬼の不気味な三白眼と口笛。一斉捜査前の隊列の静寂と逃げ惑うアウトローたちの喧騒。あきれるほど紫煙が立ち込める捜査会議とアウトローの闇の謀議。最下層民たちの地を這うような情報収集力(盲人の聴力!)。巨大な地下室に集い私的裁判を扇動する群衆の血走った視線。

サイレント時代に培った画面の構成力と、新たに手にしたトーキーの無音/有音のメリハリを活かしながら、手を変え品を変え話をころがし興味をそがないフリッツ・ラングの演出アイディアの多彩さに舌を巻く。

(評価:★4)

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