[コメント] ユリョン(1999/韓国)
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劇中において反日感情をむき出しにして吠え立てる彼と同じぐらいの鼻息で、製作者がこれを作っていると言ったら、韓国人を舐めすぎだと思う。
パロディーとまでは言わないが、これはあくまでエンターテイメントのためのエンターテイメントであり、反日感情はイデオロギーによりサスペンスを醸成するという『レッド・オクトーバー』と『クリムゾン・タイド』の構造を忠実に模倣するための要素として、つまりあくまで娯楽要素として引っぱり出して来たに過ぎないと思う。
何故そう思うかというと、この映画にはハリウッドばかりではなく、日本からのパクリも出てくるからだ。と言っても、映画ではなくマンガ、韓国人が日本映画よりも大好きな日本の漫画。具体的に言うと、『沈黙の艦隊』である。通信用のブイだかなんだかを、相手の潜水艦のファンに絡ませ、撃沈するシークエンスがそう。もちろん最初にやったのがかわぐちかいじだったのかどうかは知らないが、少なくとも演出は『沈黙の艦隊』のその場面にそっくりだった。…つまり日本の漫画パクリながら、反日感情をネタにする。それだけ今の韓国映画は余裕があるということなんじゃなかろうか。
そりゃぁ根強い反日感情はあると思う。日本人に根強い反米感情があるように。だけどそれは、もはや娯楽として客体化出来るほど冷徹な距離を置ける代物なのであり、この映画は、そのことの証明であるような気がした。個人的に、日本の『海底軍艦』という特撮映画を思い出した。
孤島で太平洋戦争終結を知らずに終戦を迎えていた神宮司大佐が、なおも戦争は続いているものと信じ、対連合国軍秘密兵器として海底軍艦を造船していたという物語。
特撮映画なんぞのネタにできてしまう…敗戦に対する感情も、連合国、戦勝国に対する感情も、顕在化させつつ(ここ重要:決して無化するわけではない。一方で顕在化。しかし…)客体化する、すなわち娯楽化できてしまっていたわけだ。たった十五年かそこいらで…。
今の優秀な韓国映画は、その頃の日本映画よりもっと冷静であると考えるのが妥当なんじゃないかと、二、三の韓国映画と、そこに垣間見えるしたたかな商魂(もちろん良い意味での…)を見るにつけ、感じる。
たとえば、日本の往年の特撮映画なんかは欧米の感情に刺激を与えそうな部分は極力削除され、ほぼ歪曲され、あっちで上映され続けてきたわけだが、ネタにされた方が過敏になっているだけというのがこの世の常なんじゃないだろうか。作った方は無理に噛みつくつもりなんかないのに…。
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