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[コメント] ギフト(2000/米)

痛い。痛いよ。心に突き刺さるよ…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 サム=ライミ監督はデビュー作『死霊のはらわた』以来のファンで、最初はそっち路線で突っ走るのかと思っていたら、意外にもかなりまともな作品を量産する、良い映画監督になってしまった。と言うか、しっかりしたプロットと映像技術を用いつつ、マニアックな部分も残してくれる、とても好みの監督へと変身してくれた。

 カメラの向こうに嬉々とした彼の顔が見えるような、そんな良い監督になってくれたものだ。

 そのライミ監督が久々にホラー界に戻ってくれると言うので、かなり期待して観に行った。

 …だが、期待は裏切られた。

 確かに私が観たかった昔のライミ監督はそこにはなかった。

 私が期待していたのは、作り物めいた怖さと笑いだったのだが、それは全く存在せず。

 しかしながら、期待は裏切られはしたが、決して期待はずれではなかった。

 むしろ全く逆。本当に面白い。

 パワーで乗り切ったような昔の作風とは随分異なり、落ち着いた、しかも人の心理をしっかり掴んだ良い作品に仕上がっていた。いやはや、成長したもんだ。

 ストーリーそのものは「ギフト」を持った主人公アニーと言う存在がユニークな程度で、概ねにおいてありきたりなサスペンスの物語なんだけど、何せ構成が巧みだし、“痛い”描写がいくつも出てくる。

 ねちっこい暴力的な描写もそうだけど、神経に障る痛さ、と言うか、心をちくちく刺されるような、精神的な痛みを感じてしまった。

 特にリーヴス演じるドニーに責められるアニーとの会話。これは本当に痛い。

 人のために良かれと思ってやって、逆恨みを受けると言うこと。これは仕事をしていると、そう言うことが時折出てくる。私の周りでも、こういったトラブルは結構ある(私自身も含めて)。アニーが責められるシーンは、思わず自分の身に置き換えてしまい、正直観ていていたたまれなくなってしまった。それでも画面からは目が離せない。これは本当に上手い。

 ラスト部分で衝撃的な事実が発覚する所なんかは、いかにも。って感じだったのだが、その後に来る本当のラスト部分(最後にこのラストは二重構造になっていることに気づかされる)はとても洒落ていて、しかもちゃんと伏線もあって、「ああ、しまった」と思わせられる巧みな作りだった。

 これからもライミ監督からは目が離せない。と思わせたところに本作の最大の功績があるのかもしれないな。

(評価:★4)

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