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[コメント] 蝶の舌(1999/スペイン)

ジワジワと心に染みる余韻。予備知識を持たずに映画を見る醍醐味を痛感した。
ぷり

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







配給会社の宣伝文句も知らず(今も)、半ば強引に友人に誘われて行ったので、先入観無しに見たのが良かった。 脈絡のないように思える挿話も、先生との出会いと共に、モンチョ少年の成長を促す経験として描かれ、その後の急展開がより一層際だつように構成されていると思う。途中、後々の政治的な変化を暗示する複線が張られているので、それが主人公にどう影響するのか考えながら見ていたが、ラスト近くでモンチョが取った行動は私の予想を遙かに超えていて理解不能に。そんな頭真っ白な状態で、モンチョの最後の言葉を聞いたもんだから…衝撃が言語化される以前に私の涙腺は全開になってしまった。

正直に言うと、戦争と子供をテーマに持ってくるとはあざといな、と思わないわけではなかった。でもこの映画では、無垢な(と思われる)子供さえ大人たちの変化を敏感に察知して残酷な振る舞いが出来るものなのだ、という人間の危うさを描いた点で、皮肉めいてもいる。モンチョが「蝶の舌!」にどんな意味を込めて叫んだのか、モンチョの声が先生の耳に届いたかどうか描いていないため、見終わった直後は消化不良になりそうだったけれど、逆にそのために、いつまでもこの映画の余韻に浸ってしまう。モンチョにとって、あれは先生へ伝えられる精一杯の感謝の言葉だったと私は思う。

(評価:★5)

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