[コメント] カンダハール(2001/イラン=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
先日、アフガニスタンでNGO活動をしているグループが制作した「擬似地雷体験」というゲームにチャレンジしてみた。一定の大きさのマットの上をゴール目指して歩くだけのもので、地雷を踏むと大きなブザー音が鳴る、というものだ。開始後すぐ、いとも簡単に片足を吹っ飛ばされた。一緒に体験した友人たちは、ふたりとも両足を吹っ飛ばされた。けれどもあくまで擬似なので、そこに真の恐怖や切迫感はなかった。ゲームはゲームでしかなかった。
あまりに美しいこの擬似フィルムを見ただけで、本当に人々は「もう無関心ではない」と言えるものなのだろうか。
可哀想だとその場限りの同情をしてみたり机上の空論をぶってみたりすることなら誰にだってできる。そうではなく実際に、NGO団体などに連絡をとって自分ができることを模索してみた者や、ものすごく簡単な手っとり早い方法として現地への寄付を試みた者などは、実際どれほどいるのだろうか。
自分はこの映画を見ただけでは、そこまで強いモチベーションは得られなかった。そのような気持ちよりも先に「よくできた映画だなぁ。」「美しいシーンが多かったなぁ。」という感想ばかりが先にきてしまった。もちろん、それが主題の映画ならそれでかまわないと思う。けれども、この映画が制作された意図などをあちこちで見たり聞いたりすればするほど、納得しがたいような思いも募る。
また、この映画を見る限りでは、タリバンのみにすべての元凶を負わせているような気がしないでもない。地雷を最初にまき散らしたのはソ連だが、その件についてはさしてふれられていないのも気になる(つまり、アフガニスタンとアメリカとの関わりについてがほとんど映画内では語られていない)。
もともと米国人のブラックイスラム、サヒブは語る。「まずはソ連相手に戦い、次はタジクにつき、パシュトゥンにつき、最後はどこにもつかず医者として神を探している。」と。
本当にこの国の歴史や現状を伝えたいのならば、美貌のジャーナリストではなく、ニセ医者の彼こそを主役に据えて欲しかった。そちらの方が、(美しくはないだろうけれど)かの国の子どもたちの未来のためにも、より正直な胸に迫る映画を撮ることができたのではないかと思う。
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