[コメント] バスを待ちながら(2000/独=仏=スペイン=キューバ=メキシコ)
映画を見終った人むけのレビューです。
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観客の皆さん、随所でけらけら笑ったり、修理に必要なピンを捨てられるシーンで「ああーっ!」って声あげたり、バスを待つ人たちと一体となって楽しんでいました。それなのに、嗚呼それなのに、今まで見ていたのは夢!?
スクリーンの外側の我々だけでなく、内側にいる登場人物たちだって、心の中でコメントのような叫びをあげたに違いない。コメンテーター諸氏の点数が一様に4点止まりなのも、ネタバレありのレビューを付け加えたくなるのも、この楽園生活が、現実の出来事ではなかった失望感から来ているものと勝手に解釈しております。
それにしても不思議なのは、夢の中でなされた会話、明かされた秘密などがすべて現実に即していたこと。エミリオが一度も会ったことのない筈の、ジャクリーンの婚約者アントニオは、夢の中に登場した男と同じ人物、同じ車だったし、青服の女性は本当に朝鮮人参の店を知っており、太った男の荷物はヤミ物資だった。あれは本当にただの夢だったのでしょうか?
僕は、あの楽園生活は、選ぶことのできたもうひとつの現実なのだと思いたいです。みんなが少しずつお互いに歩み寄り、心を豊かに保つことができれば、あの楽園はいつでも手の届く範囲にあるんだよ。心の持ち方次第で、停留所だけではなく、キューバという国全体だって楽園に変えることができるんだよという、前向きのメッセージだと受け止めたいです。
太ったヤミ屋の男は、夢を見なかったのではなく、夢を信じていない人だったのでしょう。
バス停で一夜を過ごした人たちが、少しずつ変われたように、この映画を見た僕たちも、少しだけ変わることで、本当に彼らと同じ夢を見ることができたのかもしれません。
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