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[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦(2002/日)

最高に純粋な恋愛劇。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 あまりに評判の高かった前作『オトナ帝国の逆襲』にまんまとハマッた自分は、今回は劇場にまで足を運んでしまいました。自分の周りから余計な情報は一切入ってきてなく、このサイトでも評判が良いのだけを確認しただけだったので、内容についてはあまり予備知識無しに見た。そこで気になったのが、今回は何をテーマにしてるんだろうか?ということ。と思って見てたら、めちゃくちゃ純粋な恋愛がそこにはあった。

 廉姫と又兵衛のふたりの恋愛。なんて純粋なんだろう!!又兵衛がしんのすけに恋心を悟られた際に見せた赤面した表情は純粋な恋愛心そのものだ。身分などの関係からお互い素直になれないふたり。未来からやってきたしんのすけがそこにいることで、時代背景が恋愛を魅せる大きな要因になっている。お互いが好きになればよい未来、身分や家柄が恋愛に関係する戦国時代。この比較も絡み、想いを深く感じられる。そこら辺のラブコメが描く恋愛よりもよっぽど深みがあり、純粋な恋心が心を打つ。

 最終的にはふたりは結ばれてハッピーエンドになるだろうと決め付けていたのだが(又兵衛が死ぬという展開も考えられたが、それはさすがにしないだろうと思ってました)、なんと定番のハッピーエンドでは終わらなかった。又兵衛が戦に勝利したものの、撃たれてしまう。まさかまさかの展開だ。悲しみを表す廉姫の後姿が非常に心に響く。だが、この死が決して悲劇では終わらない(というか完全に悲劇にしたら厳しい)。ラストシーン、現代に戻った野原一家が空を眺め、廉姫も別の時代で空を眺めている。廉姫の口からは「青空侍・・・」と一言。形としては恋愛は成就しなかったが、廉姫の心の中には又兵衛はいつまでも生き続けると思う。

 今回は野原家以外の存在が話の中心だし、野原家以外は現代の人間はほとんど出てこない(しんのすけの友達は違った形で登場するが)。その分、又兵衛と廉姫に描写がしっかり行き届いてたと思う。でも、いつもの下品なギャグもちゃんと健在だった。笑って感動できるのが醍醐味だと思う。不満を言うと、しんのすけが序盤、戦国時代ごっこで見せた尻で刀を受け止める技。あの技が是非とも本当の戦国時代で見たかったです。期待してたんだけど、そのシーンはなかったんですよねぇ・・・。

 それと、監督の巧さには圧巻。戦国の戦シーンはなかなかパワーを感じた。ここまでしっかりやるかと結構驚きました。そして、彼のシーン作りは本当に絶妙です。冒頭からあの印象的な泉を登場させたのは後から考えると非常に効果的(しかも、台詞無しでイメージのみで頭に残させた)。又兵衛が撃たれるシーンにしても、最初に銃声だけを聞かせ、そこから静かに馬から落ちるのを見せる。巧いです。そして、ラストシーンの廉姫の「青空侍」という台詞での締め。巧すぎます。内容自体も素晴らしいのだが、監督の魅せ方には目を見張ります。『オトナ帝国』に続き、またまた感動させられる傑作です。

(評価:★5)

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