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[コメント] ノー・マンズ・ランド(2001/伊=英=ベルギー=仏=スロベニア)

戦争が何故存在するかって? そんなの平和を望む気持ちがあるからでしょう・・・。 と、ときおり過激なことを考えてしまう私。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 平和を望む人は戦争反対を訴える。訴えることは、訴えることでしかなく、平和を実現することではない。平和を実現する為には、すなわち戦争をなくす為には、戦争行為を抑える力が必要となるからだ。この力を行使すると戦争になってしまう。この場合、極端な例で言えば、世界平和を訴える指導者が、世界戦争を引き起こしかねない。

 ある国家が正義とか反テロとか核疑惑など何かしらを大義名分として、戦争抑止力を行使した場合も、それは戦争となる。国連がそれを行使した場合も、当然戦争になる。従って、国連は、我々同様、戦争に対しては傍観するしかない。これは、いま現在の現実の国連もかわらない。

 本作でいち早く現場に駆けつけた国連軍の軍曹。彼は、「傍観も戦争に加担する行為だ」と訴える。しかし、平和維持軍たる国連軍は、どちらも攻撃するわけに行かず、傍観するより他はない。 さて、では、国連軍がなすべき行為は何なのでしょうか? 落ち着くところ、難民救済などの人道支援になるのでしょう。 本作でも取り上げられた国連軍のこのような姿勢。コソボ、ルワンダ、東ティモールしかりです。 いろんな意味で国連軍は、平和というより、むしろ戦争の存在を前提としており、常にジレンマがつきまとう。しかし、国連軍としてはこの人道姿勢を貫くしかないと私は思います。

 皮肉にも本作のラストでは、生存者を置き去りにするという非人道的な行為を国連軍はしました。この局面で国連軍のなした実質的な行為といえば、両軍に敵方が塹壕を狙っているとのインチキ情報を流したこと(将軍の部下への指示)。 この意図は何だったのでしょうか?

 私が思うに、この情報により、両軍ともそれぞれ塹壕を砲撃することになり、塹壕に残った彼は、我慢している糞もろとも吹っ飛ばされてしまうことになるだろう。普通に考えるなら、あとあと死体処理に来た兵士が地雷の巻き添えを食わないようにした(人的被害を最小限にした)将軍の配慮なのでしょうが、もう一つのいやな可能性もあります。それは、将軍と国連軍の保身、すなわち生存者を置き去りにしたという証拠の隠滅。さてさて、真相はいかなるものでしょうか?

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 <<余談>>

 今更ですが、私は平和主義者です。平和について、自分なりに考え、周りに主張してきました。平和を主張するってのは、妙なモンでして、何かたいそうな正義を味方につけた気がしてしまい、平和を看板に、多少の失敗・迷惑を正当化してしまったりするのです。ある失敗からその落とし穴に気が付くことができた(つもり)ですが、どこかしら本作に共鳴するものを感じました。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)水那岐[*] uyo[*]

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