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[コメント] ノー・マンズ・ランド(2001/伊=英=ベルギー=仏=スロベニア)

「傍観してるのは、加勢してるのと同じだ」。そのとおりだ。 このところの忙しさと、脱力とで、うつろな頭に空手チョップをきめられたみたい。 さあ、私も一日も早く戦線に復帰しなくちゃ。アンタもがんばるのよ、”アリゾナ・ドゥ”。
kazby

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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サラエボオリンピック・フィギアスケートの金メダリスト、カタリーナ・ビットが、リレハンメルオリンピックで、戦禍のサラエボを憂いながら、「花はどこへいったの」を静かに踊った。 派手な振り付けはなく、祈るような静かな演技。

それを中継しながら、アナウンサーが、今のは2回転だったとか、3回転だったとか言ったときだった。 解説をしていた五十嵐文男氏が、「自分の出場したオリンピックの開催地が戦火にまみれているなんて、本当に辛いことなんです。」と、ピシッと言ったのを聞いて、うるうるしたのを覚えてる。 こんな戦争の最中にも、そんな近くで平和の祭典が白々しく行われていた。

戦争は、霧に巻かれ仕方なく眠った翌日、朝日を目にした直後の交替班の兵士達にも、地雷を作って手柄をたててきたおやじにも、塹壕から、引っ張り出され、生き延びるのかと思われたチキとニノにも、公平に死をもたらす。 地雷の上にのったまま身動きの取れないツェラにもやがて、同じように死がやってくる。

なのに、やれ戦果はこれこれだ、被害はこんなだったと、一層敵対心をあおるのはいったいだれなのか。 武器を売りつけて儲けているのはだれなのか、勢力圏が広がって得をするのは誰なのか。 戦争に反対してる人たちがどんな弾圧を受けているのか。 ジャーナリズムはそれをどうにかして衆目にさらして欲しい。

ボスニア人もセルビア人もない、あなた達を兵士に仕立て、否応なく戦場へ放り込んでる支配者達と対決しなければならない。 ひょっとしたら撃たれて死ぬのなら、私はそのように行動したい。 それが戦争や貧乏をなくしていく力になるはず、というか、根本的にはそれしか解決方法はない。 人間が本来持ってる暴力っていうのはそういうふうに使うもんだと思う。

(評価:★5)

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