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[コメント] サイン(2002/米)

シックス・センス』でヒットを飛ばした後、『アンブレイカブル』で大コケ。次はどう来るのだろうと楽しみだった。その結果・・・確信した。「シャマランは、ハリウッドの水野晴郎だ!」 次回作では主役で登場するかもしれないぞ。
空イグアナ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「現代のヒッチコック」とまで言われるシャマランだが、僕は別の名前で呼びたい。彼はハリウッドの水野晴郎だ。

ヒッチコックへのオマージュ、どんでん返し、毎回自分の映画に出演し、そして内容はどこか間抜け。自分の映画に出演するのは、ヒッチコックへのオマージュかと思ったら、「ちょっと違う。ヒッチコックはファンへのサービスというのが強かったが、僕は自分の作品に貢献したいからだ。」(「サイン」のパンフレットより)情熱を持って映画をつくっているが故に、自分の作品に出演する!やっぱりあんた、マイク水野だ。

馬鹿にするようなことばかり書いているが、僕はシャマランのファンである。本気で彼が大好きだ。変な映画だけど、その変な部分が大好きだ。しかも彼は間違いなく撮影がうまい。大金と特撮が武器のハリウッドで、そのどちらも使わずに、これだけ素敵な映像をつくる才能は貴重である。変な映画をつくる人、というのはたいてい、映画づくりそのものが下手なのだが、シャマランは映像作家として優れた手腕を持っている

今回もシャマラン流の演出が咲き乱れる。鏡やコップの水越しの映像、決して派手な特撮は使わず、スケールは控えめ。ミステリー・サークルを象徴するように、人物の配置は左右対称の幾何学的で、車で移動するシーンでは、空から幾何学的に走る道路を映す。映像へのこだわりは、誰にもひけをとらない。

そしてやはり、間抜けな部分がある。劇中メル・ギブソンが語る。「世の中には二種類の人間がいる。一つは、偶然など存在せず、すべての現象に意味を見いだす者、もう一つは、奇跡など存在せず、身の回りで起こったことは偶然で片づける者。」つまり今回は「メル・ギブソンの周りで起こった現象は、偶然か?奇跡か?」ということがテーマだ。・・・これだけ聞くと、すごく真面目な映画に思えるのに、その描き方はというと・・・私にゃ、偶然にしか見えないんですけど(笑)。これが奇跡かぁ?牧師に復帰したメル・ギブソンは、こんなことを説いているのか?いかにも「トンデモ本の世界」で紹介されていそうな「奇跡」である。

普通、「偶然か?奇跡か?」っていうのがテーマなら、もっとそれらしい現象を扱うもんではないか。TVで観た「偶然の奇跡!」とかいう話の方が、ずっと奇跡に思える(兄が弟を殺害しようとして銃を撃ったが、はずれて失敗。銃弾は木にめり込んだ。数年後、庭で工事をしていてダイナマイトを爆発させたら、木にめり込んでいた銃弾が飛び出して兄に命中、そのまま死んでしまった、とか)

それとも、シャマランはわざとこんな間抜けな奇跡をつくったのだろうか?「こんな馬鹿げたことでも、人は奇跡と信じてしまうんですよ。」って言いたかったのか?現実にそういう人はいるわけだし。う〜ん、それはそれで変わったテーマだと思うぞ。

        *        *        *

それにしても……。なんとなく、物足りなさが残る。確かに変な映画で、突っ込みどころは多い。しかし僕は、もっともっと変な映画を期待していたのだ。シャマランって、よい意味でも、悪い意味でも、もっとぶっとんだアイディアを見せてくれる人だと思う。よい意味で、ぶっとんでるのが「シックス・センス」、悪い意味でぶっとんでるのが「アンブレイカブル」だ。前者のオチを聞いたときの、あの感動。後者でブルース・ウィリスが列車事故で一人生き残った理由を聞いたときの衝撃。それらに比べて今回はぶっとび具合が足りない。「偶然か?奇跡か?」というテーマ自体は、何も間抜けではない。だから物足りないのだ。「アンブレイカブル」は”××××の誕生”(伏せておきます)という、聞いただけでびっくりするようなテーマを扱っていた。だから「そんなテーマを大真面目に扱う人がいるのか!」と、驚きと馬鹿馬鹿しさに涙しそうになった。ああいう「ぶっとんだアイディア(テーマ)」をシャマランに求めているのだ。

僕が「サイン」の予告を見ながら、考えていたことは、こうだった。今度はどんなストーリーでくるのだ?ミステリー・サークルが出現するということは、宇宙人が登場するのか?それともサークルは、父親が信仰を取り戻すために子供たちが仕組んだものだったのか?いやいや、シャマランがそんなつまらないアイディアを使うはずがない。とすると……そ、そうか!(キバヤシ風)

「ミステリー・サークルは意志を持ったトウモロコシたちが、自らの体を使ってメッセージを送っているのだ!」

「人類は自然界から復讐を受けるのだ!人類の存亡をかけて(でも映画のスケールは小さい)、メル・ギブソンとトウモロコシの戦いが今始まる!」

シャマランならこれくらいやると思ってたんだけどなあ・・・。

シャマラン!次は、もっと凄いアイディアを用意してくれ。どうせなら、主演まで張って、ラストは二段のどんでん返しを用意してほしい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)ナッシュ13[*] roomrunner[*] 死ぬまでシネマ[*] ピロちゃんきゅ〜[*] まゆ

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