コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] es [エス](2001/独)

この映画で興味深いのは、被験者たちの心理は役割順応というより金のためであることに実験側が全く気づかず、実験の成果だと喜んでいるところである。
わっこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一般応募者を囚人と看守役に振り分け、2週間演じさせることによって反応を見る実験が、やがて暴力による支配という血生臭い悲劇を生んでしまう映画。

最初は遊び半分だった看守と囚人役の人々が、次第に支配する側とされる側の関係になっていく過程が、サスペンス・タッチで描かれている。

途中の辞めたいという参加者の希望が無視されたり、二人の人間が精神的に耐えられなって病院に運ばれたのに全く表沙汰にならなかったり、何より暴力をエスカレートさせる看守役の人々を大学側が黙認するところなど、どう観てもリアリティはなく、主人公タレクがブラック・ボックスから脱出し、囚人役の人々を救って、看守たちを叩きのめす爽快感のある展開からしても、これは『ロック・アップ』のようなアクション映画としてみた方がよいのかも知れない。

現実にもこの映画のような実験がスタンフォード大学であり、1週間で実験を打ち切ったようだが、正直こうした実験で人間は簡単に役割に順応してしまうという結果を出してしまうところは胡散臭い。実験の詳細はわからないが、役割順応と言うより、2週間も役を演じ続けることへのストレスではないかと思える。

この映画で興味深いのは、看守役の人間は4000マルク欲しさに実験を中止させたくないとあせった結果の暴力のエスカレートで、囚人側も4000マルクをもらうまでの服従であり、さらにタレクですら1万マルクの取材料欲しさの煽りであり、被験者たちの心理は役割順応というより金のためであることに実験側が全く気づかず、実験の成果だと喜んでいるところである。

しかし、それを考慮してもタレクともう一人以外の囚人たちが最後の最後までどうして団結して抵抗しないのが不思議。大学側が選考過程でそういう人間を選んだのだとしたら、実験の意味もないと思うし。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)おーい粗茶[*] リア[*] 24 mal[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。