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[コメント] キル・ビル(2003/米=日)

長編映画『キル・ビル』について、前篇を観たうえでの感想。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 なんだ、あのSBマークは?あまり見かけないマークだぞ?カレーか何かの宣伝でも始まるのか?なんて思っていたら、予想を上回るハイテンションな幕開け。でも正直に、正直に告白すると、あの暗闇での激しい息遣いに最初はいきなりのラブ・シーンを想像していたのだが、それはいい意味で裏切られた。さすがはタランティーノ、いきなりの見せ場。うん、いいね。個人的にはすごくいい感じで映画に入っていけた。

 が、しかし、そのあとがいけない。タランティーノが愛した日本映画とはその程度のものなのか。彼はこれを深作欣二に捧げようというのか。

私は常識では考えられないあらゆる所に日本刀が登場することには何の問題も感じていない。これは映画なんだから、彼の好きにやってくれたらいい。しかし、せっかくの見せ場である殺陣をあんな風にやられると本当に困ってしまうのだ。彼は忘れたのか、『トゥルー・ロマンス』で見せたあの心を。これは本当に身勝手な考えかもしれないが、私は殺陣はそこに行き着くまでの悲哀の情があっての殺陣であってほしいと考えているひとりだ。だからああいう派手な殺陣で魅せようというのなら、その裏には「何故あそこまでしなければならないのか」という悲哀を帯びた説得力が欲しかった。

 もちろんXXX(ユマ・サーマン)が空白の4年間を過ごすに至る若干の描写があるにはある。しかし私にはそれだけでは明らかに不十分だし、せっかくの殺陣が(といっても、決して素晴らしいと言えるほどのものでもないのだが)勿体無いという気さえしてくるのだ。

 例えばこの映画がオーレン・イシイ(ルーシー・リュー)の物語として深く掘り下げられ語られていたならば、私は最後の雪の庭のシーンに大粒の涙を流したであろう。けれど逆にあれほどまでの過去を語っておきながら、彼女の死に深い悲しみが付きまとわないのも、私には納得がいかない。彼が自分が観たいシーンを作りたいがためにこれを作ったのはよく分かるのだが、決してそこで終わらず映画としてのまとまりを見せてほしかった。

 まぁ今回私が観せてもらったのはあくまでもVol.1。つまり前篇だけってことだし、2を観たら全て納得してこれらの発言を撤回するのかもしれないのだけれど、とりあえず今の段階でこう思ったということだけは言わせてもらった。

 そういう意味では、本来は現時点でこの映画を採点することはしないほうがいいのかもしれない。でもこのように1本の映画として公開された以上は、あくまでもこの前篇を観たところまでの評価ということで採点することにした。

 色々言ったが、この映画が嫌いなのかというと、決してそうではない。完全に駄目だと思っているなら、2なんて観る気すらしていないだろうが、少なくとも今は春が来るのが楽しみではある。そしてまた後篇を観たあとに前篇通しての評価は赤★だと言えるような結果を待ちたいと思っている。

(評価:★3)

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