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[コメント] キル・ビル(2003/米=日)

やや遅めの、「パルプフィクション・アジアバージョン」ってとこかな。(031113)
しど

タランティーノの出世作、『パルプフィクション』は、タイトル通り、 三文小説のオイシイところ取りイカレポンチ傑作映画だったが、この作品もそんなティストに、アジア風味の味付けがしてある。

驚くのは、日本映画がこの所見出せなかった、刀によるアクションの面白さである。 「殺陣」というよりは、「殺陣道」のような美学に行き着いてしまった日本では、 それを覆したつもりの若めな監督による『SF サムライ・フィクション』も、 時代劇パロディで終わってしまった。 もはや、刀でのアクションはできないかと思いきや、タランティーノは中国武術と組み合わせた新しい殺陣を編み出した。 無論、従来の殺陣では無い。しかし、主役陣は、ハリウッド映画製作過程でおなじみの訓練として、それなりに、日本刀を用いた動作を学んでいる為か、奇妙な中にも時折見せる仕草は、まさしく、「殺陣」なのである。

タランティーノ流のアレンジの妙がアジアンティストとして随所に見られるこの作品は、我々日本人にとっても、非常に「ラッキー」な出来なのではないかと思う。イカシタサウンドトラックに乗せたイカレタ「エロ・グロ・ナンセンス」に眉をひそめつつも、そのうち、日本を舞台にした無国籍バカ映画を見ているような快感に変わる。今後、この作品に影響された邦画が粗製濫造されそうな予感すらする。

だからといって、全てが満足ではない。千葉真一が出ている場面だけが、どうもしっくり来ないのだ。他の場面は、「日本版パルプフィクション=漫画」ちっくな雰囲気に溢れているのに、千葉だけは、従来の外国映画に登場する日本人として「リアルな不自然」を醸し出してしまっている。旬を外した「臭い」演技が、重さになってしまっているのだ。

まあ、それも後半の長い長い殺陣シーンへの休憩と思えば済むが、惜しいのは、もう五年早く出来ていればエポックメーキングにもなれただろう、ということ。'99年の『マトリックス』のカンフー修行シーンが日本風味だったし、'00年の複刻バカ映画『チャーリーズ・エンジェル』の後では、タランティーノの軽さも多少効果を失った感がある。どうしても「古さ」をイメージしてしまうのだ。そこが残念である。

(評価:★4)

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