[コメント] カラマリ・ユニオン(1985/フィンランド)
ナンセンス笑劇として傑作だと思う。物語の整合性やもっともらしさなんぞハナっから眼中にない。突出した細部をツギハギしただけの映画であり、「映画には中身なんか必要ない!」というヌーヴェルヴァーグ(特にゴダール)思想の正統的後継作品。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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スクーターの走行シーンでは嬉々としてジャンプカットを披露するし、美術館の絵画の額に録音スタッフが映り込もうともお構いなし。やってみたいシーンとショットだけを撮影し羅列した結果、驚くべきほどの瑞々しさが獲得された。本家ヌーヴェルヴァーグの作品のうち、その優れたものは時代を越えて「ヌーヴェル」であり続けている。その意味でも『カラマリ・ユニオン』は正しくヌーヴェルヴァーグ。
ところで、私が腹筋ねじ切れそうになるほど笑ったのは「俺はワル、最悪のワル」とフランク達が連呼する唐突なライヴシーン。この唐突さと意味のなさはちょっと凄い。太っちょサカリ・クオスマネン(ドアマンになった奴ね)のギタープレイが無駄にかっこいいのも可笑しい。やはり唐突に始まる「スタンド・バイ・ミー」では笑いと切なさに引き裂かれる。
あるいはこの笑いの感覚を受け容れられない者でも、カウリスマキ史上最も都会的なスタイリッシュさを持つ画面と、カウリスマキ史上『白い花びら』に次ぐモノクロームの美しさには参ってしまうのではないだろうか。フランク達の出発を超ローポジションの仰角で捉えたショットは、『ワイルドバンチ』の「死の行進」に通じる「並行」と「歩行」の美学だ。ま、大袈裟ですけど。
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