[コメント] 鶴八鶴次郎(1938/日)
「おや、お豊ちゃん、こんなところにホクロがあったんだね」「あらそう?」といちゃいちゃし始めて、周りを気にして佇まいを改める。こんな可愛らしい演出の一方で、あの厳格なラスト。これこそが成瀬の真骨頂。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ラスト、鶴次郎は鶴八の芸に難癖をつけて帝劇公演をポシャらせた理由を語る。芸人暮らしがつくづく嫌になった、鶴八は堅気の世界で奥さんをやってたほうがよいと。それも真意だろう。だが、ここで自分は鶴次郎自身も気づいていないであろう深い傷に気付かされる。
そもそも最初っから、鶴次郎がどうしてあんなにもタニマチの旦那を嫌うのかがよく分からなかった。善人なのに、スポンサーなのに。
ラストの告白で気づかされる。最初から自分には敵わないことを悟り、だからこそあんなにも毛嫌いしていたのだ。
落ちぶれて初めて悟ったのではない。最初っから。本人も鶴八も、観ている我々もそのことに気づかない。成瀬だけが気づいている。その語り口に戦慄する。
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