[コメント] ソラリス(2002/米)
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原作ではあくまでソラリスという存在が重要視されている。本作は大胆にも愛というひとつのテーマに絞り込んであり、私はこれは正解とみた。もともとタルコフスキーの作品もレムからは「解釈が全く異なる」と手ひどいクレームを受けていることを考えると、タルコフスキー版も「ひとつの視点」であり、簡単に言ってしまえば「アレはアレ。コレはコレ」なのだ。
ソダーバーグは言っている。「この作品はタルコフスキーのリメイクではなく、レムの原作を基にした。また、本作はテクノロジーを描いているのではなくラブストーリーである」と。私は前作を観ていない分、この言葉を素直に信じた。
リメイクとうたわれるものには何種類かある。
1.忠実な再現
2.新たな視点
3.パロディ
このほかにもあるだろう。「忠実な再現」で最近有名なものとしては『サイコ』がある。カメラワークから音の導入までを再現した驚異のリメイク。リメイクという意味さえも考えさせられた作品だった。「新たな視点」はリメイクという形態ではもっとも多く、インスピレーションや設定、解釈を比較的自由に変えられるもの。最近のものでは『リング』『猿の惑星』『バニラ・スカイ』などがあった。ここに「パロディ」という項目を入れるのはどうかと思うが、これこそ「オリジナル」がなければ決して作られなかったものであり、遊び心を入れて作り直すという作業は『ヤング・フランケンシュタイン』のようにオリジナルへの多大なる敬意が感じられるものも多く、リメイクという範疇に入れてもいい気もする。(余談として。パロディ作品を誉めそやしオリジナルに対して誹謗するという方もいらっしゃるようだが、まさに本末転倒である。パロディはオリジナルとセットだということをお忘れなく)
この作品は「新たな視点」である。原作「ソラリスの陽のもとに」でもドラマチックに描かれている亡き妻との出会いを中心に・・というかそこだけを切り取ったと言ってもいいくらい割り切った設定になっている。原作を読んだ限りでは名作であることに異論はないものの焦点がぼけている印象もあり、個人的に読後に一番印象的だったその部分をメインにもってきたのは歓迎できた。上映時間は99分。設定こそドラマチックであれ淡々と進む内容に対してはこの最近では短い部類に入るこの時間はちょうど良かったといえよう。ソラリスの描写は美しく荘厳。恐怖ではなく夢を見させてくれるようなその姿はこの作品の狙いと合致していた。
蛇足だが。もし、どうしてもタルコフスキー版と比較してしまうのならブルネル大学のジェフ・キング氏が述べている以下の言葉がもっとも的を得ている。「(意訳)ソダーバーグの製作したこの作品がたとえ最悪であっても、また素晴らしくともタルコフスキーの『惑星ソラリス』の存在意義が問われるわけではない。もし影響を及ぼすとするならば、オリジナルへの関心を高めるということだけである」
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