戦争と今に続く社会が搾取で成り立っていて、利用された犠牲者たちの恨み哀しみ憎しみ怒り悔しさをしっかり描いている。原作にはないオリジナルストーリーだと思うが、原作者の意図を読み取って、他人でもきちんとこういうものを作れるんですね。つまり、戦争の犠牲者たちのおかげで今日の平和があるなんてのはまやかしで、おれたちはただの無駄死にだ、っていう水木の戦争観。

ベッドに拘束され血を強制的に搾り続けられる村人、独裁者の欲望の餌食になって利用され絶望と憎しみの果てに妖怪化する沙代の描き方。これが戦争という、支配者層が一般市民の生命と財産を搾取し、尊厳を蹂躙する行為の本質で、『なんとか−1.0』で描かれているような、現代人が勝手に戦中、戦後の人たちを自分たちの都合にいい見立てで適当（でたらめという意味）に描いているのとは、創作に携わる人間の基本的な姿勢や心構えに百万光年の差を感じる。

鬼太郎の親父が、狂骨の大群を一手に引き受けようと自分はここに残るという場面での自分の子どもがこれから生きる未来のためだからという台詞。現代の話に戻って、最後に残った狂骨こと時弥少年に、君が抱いていた希望や夢のある未来とはほど遠い世界にしてしまったことを詫びる台詞。自分も含め今の世界がこんな酷い状態であることの責任を恥じ少しでもまともな世の中にしていかなければならないと思った。