内容を要約すると「飛行機がハイジャックされました。乗客たちは犯人たちに反撃しました。しかし手遅れでした。機は墜落しました。おわり」。これでは事実をただなぞっているだけで、話の中心も何もあったものではない。

前半部では管制センターや空軍基地の状況が描かれ、情報が錯綜したり、管制官がパニックを起こしたり、関係機関同士で連携が取れなかったりして、次々起こる異常な状況に地上が対処できていない様を追っている。しかし、この前半部が長すぎるために、後半部との整合性が取れていない。『ユナイテッド93』というからには機内の話をメインにすべきで、そうでなければこの便でなくとも、WTCに突っ込んだ『アメリカン11』でもいいわけである。

製作陣はきっと他機にはなかった何かをこのUA93に見出したのだろう。であれば、やはりそのUA93の物語を描いてほしかったのである。あれもこれもと詰め込んで、焦点がぼやけどっちつかずになってしまった作品ではなく。