例えば「靖国の御神体は日本刀」だなどと基本的な間違いを言っている時点で、高評価はできぬのだが。

何よりも違和感を感じたのは、現役の靖国刀刀匠の映像と、日本刀を手に暴虐を尽くす旧日本軍の兵士たちの写真とをモンタージュした編集である。これでは日本兵と刀匠をイコールで結ぶようにしか見えない。悪意あっての編集とは思えないが、殺戮にも使われた刀を今に至るまで作り続けてきた人物とはいえ、撮影に応じた刀匠に対していくら何でも礼を欠いているのではないか。

好意的な見方をすれば、監督には刀匠を貶める意図はなく、心境としては単に「刀憎んで人を憎まず」といったところであったのだろう。にもかかわらずこのような表現になっていることについては、正直なところ首を傾げざるを得ないのである（まあ、自分の心が狭いゆえにそう解釈したのかもしれないし、あるいは日本人であることも影響しているのかもしれないが…）。

境内での集会を妨害しようとするもアッサリつまみ出される神経症じみた青年や、それに対して莫迦の一つ覚えのごとく「中国に帰れ」と恫喝し続ける男性、小泉首相を支持するという星条旗のアメリカ人（最初は注目を浴びて御機嫌だったのに、「アメ公」と絡まれた後警官に退去を求められて悄然と立ち去る姿が面白い）など、興味深く見たシーンもいくつかあったのだが、結論部分の“ズレ加減”がそれをブチ壊しにしているような気がしてならない。

まあ、あんまり結論に拘泥しすぎるのも良くないので、印象に残った箇所をもう一つだけ挙げてみよう。それは僧侶の菅原龍憲が、靖国の姿勢に対する自らの持論を述べているシーンである。宗教者である菅原と、宗派は違えどやはり宗教団体であるところの靖国神社とのこの大きな落差は、どちらが正しいかということは別にして、瞠目すべき落差であると感じた。とりわけ、上記のような「頭でっかちなだけの左翼」「チンピラまがいの右翼」の情けない姿と対比すると、尚更のことだ。

とは言え、靖国側が何故A級戦犯や外地出身者の分祀に応じないのか、本作では説明されない（また、何故かを理解しないまま本作を鑑賞することは、逆に危険でもあると思えるのだ）。その点において、作り手が「反靖国」的な視座にあることを否定できない点は、理解しておかねばなるまい。