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[コメント] デューン 砂の惑星PART2(2024/米)

長丁場の中で見せ場を適切に配して求心力を最後まで維持し、ラストの昂揚を作ったマネージ能力はさすが。物静かな文化人類学者のようだった作風が、俗な既存イディオムをも呑み込む骨太の作風に変容した気がする。主人公の成熟に見合うかのようだ。例えば、
ジェリー

1) 戦闘シーンで一番難しいのは、名のない戦士たちの白兵戦。そこを露骨に逃げる制作者も多い中、丁寧に見せた。 白兵戦をださない言い訳のようにミサイルやレーザー光線が飛び交う画面よりも古い型に戻したのだが、寡黙な潔さがある。画面の隅っこであっても戦い一つ一つの振り付けのち密さは無双。

2) 救世主伝説を主幹にしながらも、シャーマニズム、兄妹(姉弟の時もある)二頭政治体制、母系制的宗教集団など、祭祀主導型の政治にかかわる知見が、地球上の様々な文化から取り入れられているのが明白だが、解説は極度に少ない。観客が勝手に解釈することを許容している。

3) 盾と剣だったハリウッド剣劇を、『スター・ウォーズ』が決定的に変えた、と自分は思っている。革命的な変化だった。つまり、盾を捨て去ったわけだが、本作も、盾なしの伝統を引き継いだ。ここにも、言い訳はない。空中に浮かぶ恒星の不思議な蝕も、『スターウォーズ』が先行しているわけだが、堂々と取り込んでいる。

先行例のある素材の取り込みは丹念に見れば他にもあるかもしれないが、取り込み方の不敵さに加え、洗練の度が勝った結果、一流のレベルが維持できているという次第。この監督、スタンリー・キューブリック型の創造性の信奉者と思っていたのだが、ちょっと違うのだ。

前作批評でも、砂の表現が無類であることを指摘したが、今回の水準も高かった。フレメン、ハルコンネン家、皇帝家の屋内空気感の描き分けも立派だった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] シーチキン[*] DSCH[*]

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