[コメント] 初恋のきた道(2000/中国)
冒頭、モノクロームで映し出される息子と母のやりとりが過去の話かと思ったら、逆にこれが現代の場面だった。母と父の恋物語を息子が回想するシーンでカラーに切り替わり、中国北部の農村風景を鮮やかな色彩で描いている。風景だけで感動を呼び起こす映像の力はチャン・イーモウらしく、そして期待以上。四季の移り変わりが、変化する二人の関係を彩っている。
天の邪鬼な私は「泣ける映画」なんて紹介されると、どこで泣かそうとしているのか詮索し、防衛体制に入ってしまうのだが、チャン・ツィイーが中綿入りのモコモコ上着とモコモコもんぺでちょこまか山道を走る後ろ姿を見るうちに、いじらしくて、純粋に恋する気持ちを体一杯に溢れさせるディを応援し、彼女と共に、些細な出来事に一喜一憂していた。
映画の核となる物語自体は、「村娘が町から来た青年に恋をして結ばれる」という単純なものだが、それによって、冒頭では単に頑迷な老女のように見えた母親が葬儀に拘る理由が見事に浮かび上がってきた。そしてラストで息子が取った行動もまた、この物語を締めくくる最高のエピソードだった。物語の上での本当の主人公は、この老母なんだよね…
細かいことを言うとすれば、チャン・ツィイーは決して素朴な村娘タイプじゃない(美少女だけど)。三つ編みで野暮ったい服を着ていても、どう見ても垢抜けた都会の少女の顔立ちをしている。可憐な可愛らしさや純朴さで人々の心を惹きつけるディは、それを演じきったツィイーの演技力の賜だと思う。
だけど、いくらこの映画がプロモーションビデオ(笑)と言ってもいいくらいツィイーのための作品だとしても、パンフレットのキャスト紹介ページに、他の役者が載ってないっていうのは、かなり酷いんじゃないの!?
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