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[コメント] 座頭市物語(1962/日)

「市の命はそんなに安か売れませんぜ」…震えます。
たかやまひろふみ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







後の大量殺戮チャンチャンバラバラなシリーズと異なり、この映画での市は滅多なことで刀を振るわず、揉め事も極力避けようとします。居合抜きの技にしても、請われても「見世物じゃねえんだ」と撥ね付ける程に。勧善懲悪のヒーローではなく、アウトサイダーとしての立ち位置が強調されています。

そんな市がひょんなことから敵対する組織の剣客、平手さんと知り合いになります。肺を病み、自らの死期を知るが故に平手さんもまた世間との必要以上の関わりを避けています。立場は異なれど似た者同士である二人は、互いに剣の腕を認め、酒を酌み交わし、多くを語らずとも心を通じ合わせます。(飲みの席で、市を盲目の按摩として邪険に扱うヤクザ衆と、対照的な平手さんの態度に注目)

それだけに、数少ない理解者同士である二人が対決するラストは切なさが際立ちます。派手な効果音も血飛沫もない、それでいて息を呑む緊張感溢れる立ち回りの末、市の刀に貫かれ、絶命の間際に「どうせ死ぬのならば、貴公の手にかかって…」と告白する平手さん。(ここで瞼を震わせ感情の振幅を表現する勝新の演技よ!)

これぞ、やおい映画の真骨頂であります。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)けにろん[*] 荒馬大介[*] 甘崎庵[*] ジェリー[*]

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