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[コメント] クレイマー、クレイマー(1979/米)

この作品は......
takud-osaka

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







もし子供が女の子だったらどうなっていただろう?ちょっと違った展開になっていたような気がする。男の子という事でお父さんと、なんか親子というよりも同志のような結びつきで、歳は離れていても男同士大変だな、なんて感じだった。この作品はコメディーです。 みんなが思うであろう、何故ジョアンナはテッドの制止を振り切って冒頭で出て行ってしまったのか、という疑問ですけど、私なりの意見を。彼女が出て行ったことそのものに関しては、この夫婦双方に責任があると思う。ジョアンナの悩みをテッドが真剣に聞いてやろうとしなかった(仕事が忙しかったという免罪符を掲げても意味がない)、ということ。そういった状況下で彼女は鬱病寸前まで追いつめられていたというこでなのでしょう。  ただ、こういう役柄をメリル・ストリープという女優に充てたと言うことが、演出側さんは憎いというかズルイというか。その根拠は以下の2点にある。 ・彼女はまず文句なしに演技が上手い。  ・この作品以外にも当時の彼女の役柄は、「最初から被害者になるべくして生まれたような可哀想な女」といったものが多く(『ソフィーの選択』『フランス軍中尉の女』など)、登場人物そのものに対してというよりも、彼女の迫真の演技に同情してしまう(特に世の急進的フェミニストの方々は)。        何が言いたいのかというと、つまり私はこの点をはっきりしておきたい。メリル・ストリープという、独特の個性を持つ女優が演じたジョアンナが、世の「家庭に縛られて自由のきかない」、なおかつ「男性なみに自立心がある」女性の典型ではないのだ。これくらい社会現象にまでなってしまった作品は、どうしてもそういう片寄った考え方が出てしまうので敢えて釘をさしたい。あくまでもひとつのサンプルとして観るべき。ゆえにこの作品を教材に採り上げて、それで「女性論」などの講義などしてはならない。こういう勘違い大学教授は五万といる(蛇足。気にしないで)。  この作品は根本はホームドラマ、とある家庭とその崩壊を描いているのだ。ジョアンナの言い分だけを取り上げることは、全体の半分を指し示しているに過ぎない。勘違いをしてはならない。そして家庭が崩壊することで、最大の被害を被るのは二人の間に生まれた子供達だということ。この点も大事。だから最後にジョアンナはああいう決断をしたのではないのか。そしてもうひとつ。仕事による社会活動が男性だけの聖域じゃないと言うのなら、子育ても女性だけのそれではないということも言っておきたい(離婚後の子供の養育権を争う裁判の場合、どうしても母親の側に偏る傾向を、考慮をすべき。)。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*] こしょく

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