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[コメント] 少女の髪どめ(2001/イラン)

歯並びの悪い青年がポロポロ涙を流しているさまを見て、「ワニが泣いてるみたいだな」と思ってしまった。 ちなみに西洋で「ワニの涙」といえば・・・。
木魚のおと

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ウソ泣きのこと。辞書ではそら涙と訳されていますね。

青年ラティフの涙は、ウソ泣きではない。でも、理由はどうあれ、そのときの口実は決して誉められたものではないよね。 ラティフの周りの人は、みないい人ばかり。口うるさい親方のメマルだって、ただガミガミ言うだけじゃなくて、実は労働者ひとりひとりを気遣っていることがすぐにわかる。 だからいっそう、ラティフの自分勝手で大人げない言動が目立ってしまう。

なるほど、ラティフは他人のためになにかをしてあげることの大切さをおぼえた。でもそれは、「オレのため」が「彼女のため」に変わっただけで、自分自身のことしか考えていなかった今までとあまり違っていない。 ワニの涙を流しながら、少女の父親で建設現場でケガをしたナジャフのために用立てた金が、もっと切実に困窮している男に渡ったことを知り、彼は無力感にさいなまれる。 ラティフにとっては、彼の手で「オレの女」が幸せにならないかぎり、人助けにはならないのだ。

そんなラティフが成長のきざしを見せるのは、ラストシーン。 彼の親切が功を奏して、ナジャフと娘のバランは金を手にすることができた。しかしそれは、彼らが故国アフガニスタンに帰って、遠くに行ってしまうこと。 ラティフにとっては不幸な結末でも、それがバラン父娘には幸せな道だと気づいた彼は、引っ越しを手伝い、旅立ちを見送るのだ。本当の成長は、映画が終わった後からゆっくりとやってくる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)プロキオン14[*] フランコ[*] トシ

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