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[コメント] WANDA/ワンダ(1970/米)

何者でもないし、何者かになる意思もない。すでに小娘でもない女ワンダ。同時代のアメリカンニューシネマの主人公のように体制から弾かれたわけではない。この女は何もしない。ただそこに存在し、流されているという自覚すらなく世の中を“流れている”だけだ。
ぽんしゅう

ワンダ(バーバラ・ローデン)には生活や社会いといった概念がないかのようだ。だから精神的な充足のための喜怒哀楽といった感情や、物や富を得たいという所有欲や支配欲もない。ワンダは当然この社会において強者ではない。だが、もしかすると弱者という対(つい)のポジションをも超越してしまっているように見える。

演出家としてのバーバラ・ローデンはワンダという女にいかなる感情も託さない。だからだろう、ワンダの何もなさには、哀れさよりも怖さを感じてしまった。これは無自覚なアンチ生活者による、アンチヒロインを志向した、アンチドラマ映画なのかもしれない。この覚めた視線はどこに向かっていたのだろう。確かに、この先の作品が観てみたくなる映画作家だった。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ゑぎ[*]

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