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[コメント] トウキョウソナタ(2008/日=オランダ=香港)

昔から邦画は嫌いな方ではなかったですが、小津をはじめ古い邦画を観るようになってから、俄然今の邦画が面白くなった!
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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すごく面白くてビックリした。いや、本当に面白かった。もうなんだろうね。印象的なシーンの多い事。もうみなさんも仰ってますが、冒頭の、開け放した窓から吹き込む雨なんかすごく良い。これは一体何の暗示?と、カーテンの如く変に気持ちが揺れる。

ただ中盤から終盤にかけて、家族の崩壊部分を描くあたりから少しの違和感を覚えました。なんだか着地点を見失っている!?とすら思えるほど不自然な描写が増え、台詞も急にフィクションの香りが強くなる。説明くさいっていうか嘘くさいっていうか。特に母親のあまりの壊れっぷりが気になるところなんですが、この一家の核は母親(妻)なのだなと思わせる事には成功しているかな。家族の要となる核が内にこもっている以上、家族が内へ、内へ、となるのは必然なのかも知れません。

家族が再生の兆しを見せた時、父親はどうだった?あんなに嫌がっていた清掃員の作業着で家に帰宅する。次男がそれを見て「変な格好」と言う。息子が父に目を向けた瞬間。そうしてスクレーパーを片手に、澱みのない目で働き出す父親。ああ、核が母親から父親へと変わるんだなと思わせる良いシーンでした。

ただ、現代の家族が抱える問題を浮き彫りにしたような形ではあるけれど、先にも書いた通り、爆発を位置づける一連の出来事があまりにも現実離れしていて、希望を感じるラストであったにも関わらず、やはり一度崩壊した家族の再生は、本当に奇跡のようなものなのかも知れないと、少しの絶望を突きつけられた気にもなりました。必要なのは自己再生能力だと私は思うので、そこを避けて描いた事が不満です。

それにしたってやはり払拭出来ない小津の陰。昔から邦画は嫌いな方ではなかったですが、小津をはじめ古い邦画を観るようになってから、俄然今の邦画が面白くなった!偉大なる先駆者・小津の作品は、やはり日本人ならば観ておきたいところですね。また、こうして今もしっかり末裔がいるという事を感じられるのが嬉しい。

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09.08.27記(09.08.23DVD鑑賞)

(評価:★4)

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