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[コメント] マルホランド・ドライブ(2001/米=仏)

ブラックホール、メビウスの輪、無限地獄。映画の終着点。洗練されきった完璧なリンチワールド、でももうそれ以外のどこへも行けない!(「リンチが帰ってきた!」というのは「実家に帰らせていただきます」という意味でもあり・・・)
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画は完璧です。夢が現実と無意識の間から立ち上がる際のしくみ、組み替えのルールといった夢のシステムを、映画の構造としてほぼ完璧に再現しています。音楽の鳴るタイミングがこんなにさりげなくて完璧な映画も見たことない。どこにも文句がつけられない。本当に見ている最中、なにも悪いところなかった。

この映画でリンチ・ワールドが極められたと思う。でも、極まってしまったということは、もうこれ以上進めないということです。リンチがリンチ一人で脚本を書いて映画にするんだったら、もうこれ以上もこれ以下も作れないんじゃないかという点にたどりついてしまったんじゃないかと思うのです。この映画の閉じていく円環構造も、そのことの暗示に感じてしまいます。二人の主人公は老夫婦と青いキューブに捕まって再び映画の最初に戻されてしまう。

自分はこの映画より、『ストレイト・ストーリー』の方がスリリングに思いました。全然リンチっぽくない世界にリンチが放り出されて、そのノーマルな世界とリンチ・ワールドがぶつかりあってまた新たな異質な世界を作り出していたから。

だから自分の希望は、リンチには一人で脚本を書いてもらいたくなくて、バリー・ギフォードでもマーク・フロストでもいいから誰かと共同執筆してくれるか、全然違う人が持ってきた企画をうまーくリンチ風に料理してくれるか。そうすれば別の人の意志が入ってきてリンチ・ワールドが程良く崩れ、スリリングになると思っているんです。

当初の企画通りマルホランド・ドライブが連続ドラマで作られていたなら、また違う感想だったと思います。この映画の終わらないやら終わるのやらという感覚が本当に数ヶ月続いてたら、かなり中毒性高かったでしょう。この世界を2時間ちょっとに納めるのは、ちょっと悲しい。

この映画のおかげで、「映画の構造」というものを面白がれることはもうないのかもしれません。リンチ・ワールドが極まっただけでなく、映画の構造というもの自体も極まってしまったんですから。極まるっていうのは行き止まりってことです。となると、これから好きになる映画というのは、ただ「好きな俳優が映っているフィルム」という意味でしか好きになれないかもしれません。そんなことはないのかもしれません。でももし本当にそうなってしまったら、そんな状況を打開してくれるのは一体誰なのでしょうか。やっぱりそれもデヴィッド・リンチだったら、と祈らずにはおれません。そのときにこそ素直に「リンチが帰ってきた!」と、自分は言えるはずです。

(評価:★4)

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