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[コメント] 裸の島(1960/日)

結果オーライで芸術映画にされてしまった巨匠の作品。やはり新藤兼人という名の成せる業なのでしょうか。
sawa:38

淡々と黙々と働く(生きる)夫婦をカメラが撮る。ドラマティックな出来事もなく、延々とカメラは廻る。

私はこの単純な繰り返しの映像の単なる傍観者として「眺める」ことしか出来なかった。単純作業の繰り返しには感情移入出来る余地はまったく無いからだ。

ふたりの名優はほとんど芝居らしい芝居をする事もなく水を担ぎ山を登る。あえて断定するが、これは芝居ではなく単に役者の作業風景にしか過ぎない。あれが芝居だと言うのには無理がある。

低予算という事情もあったのだろうが、この監督の強い意志によって台詞を一切入れないという実験的な構成はどうだろう。映画はサイレントの歴史を持っているように、本作も台詞無しという構成でもその意図は充分画面から伝わってくる。それは多くのコメンテーターさんが書いておられるように私も理解はしたつもりです。

しかし、それは重過ぎる呪縛となって作品事体を身動きできないところまで縛ってしまったのではないか?単純作業の水汲みや日々の暮らしを捉える分には、それはまだ機能していたと思う。だが、終盤になってやっとドラマ(息子の死)が動き出してもそれは続けられたのだ。私はこの時点で本作にあきれかえった。

死に瀕している息子に対しても「声」を出すこともせず、医者を呼びに行くに及んでも「声」を出さない。まるで聾唖の夫婦の物語なのかとさえ思ってしまう。ここにきても本作は「台詞無し」という呪縛から解放されることなくドラマに感情移入させはしないのだ。

最後まで私は「傍観者」の立場で鑑賞させられた。生きることの大変さ、小さな島にへばりつくように生きることの意味、こういったテーマが巨匠の手によって巧みに表現されていたことは理解します。本作は評論家に評判がよろしいようです。賞も取っています。しかし、役者が芝居らしい芝居もせず、台詞もないから感情移入出来ず、単純な反復作業の映像の繰り返しではいったい私に何を感じろというのでしょう?

藝術用のアンテナをビンビンに張り巡らして、正座して鑑賞しなかった私が悪いのかもしれないが、とにかくこれほど面白くない映画はなかったし、居眠りしなかった自分を褒めたくなるような映画もなかった。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ペンクロフ[*] IN4MATION[*]

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