コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 死ぬまでにしたい10のこと(2003/カナダ=スペイン)

台詞が途切れた後、その表情で、その間合いで、監督はより強い演出を試みる。それに応える役者陣。その結果が「淡々としているが不気味な程の力強さ」としてフィルムに焼付けられているのだろう。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







1、病院の待合室で医者は目線を合わさずに告知する。

2、雨の中、男の車に乗り込んだ女。互いに見やる視線はかみ合わず、見つめ合うことが出来ない。しつこい位に二人の視線は合致せず、そこに二人のためらいと恥じらいが演出される。

3、似た者同士が故に巧くいかない母と娘。母を迎えに行く車中で視線を合わすこともない。

4、服役している父との面会。娘が立ち上がり立ち去る一連の動作を父は受話器を持ったまま俯いているだけだ。最後になるであろう娘の姿を見やることはなかった。見れなかったのか・・

5、不倫相手から告白を受ける埠頭のシーン。断腸の想いで女に告白するも所詮は不倫の状況は変えられずに失意に沈む男。固定されたカメラから男がフレームアウトする。見送る女の表情が徐々に変化する。台詞は無い。やがて哀しみの表情が喜びの表情へ、だが、一抹の不安も無いというような晴れやかなモノではない。そしてその理由は男が再びフレームインしてきたことで説明される。

巧いなと思う。明らかに監督の意志による演出が働いたシーンである。ただそれを表現するのは役者であり、皆それによく応えていたからこそ「淡々としているが不気味な程の力強さ」という結果が得られたのだと思う。映画は一人で作るものじゃなく、監督と役者が巧く合致しなければならないという良い手本になる作品だと感じた。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)tredair[*] ゑぎ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。