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[コメント] キッズ・リターン Kids Return(1996/日)

「社会」というジャングルに放り込まれた少年たち。「力」こそがすべて。「友情」なんて薄っぺらいバランスもひっくり返る。この壮絶なサバイバル戦は北野武映画の中で最も残酷な作品である。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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半ば強引にスパーリングに引きずり出す。負けるなんて考えもしていない。否、「勝負」するなんて事じたい考えていなかったのかもしれない。

そしてまさかのパンチを食らう。続いて二発目も・・・。ラッキーパンチではないのを悟る間もなく、マットの上でもんどりうって倒された。

カメラは金子賢の屈辱の姿と立ちはだかる安藤政信の足元だけを捉えた。

北野武監督は、安藤政信の表情のカットをあえて撮らなかったのは何故だろう。「呆然とする安藤」という「ありきたりな」カットに興味を示さなかっただけか?

しかし、今、思う。安藤は「にやり」としたのかもしれないと・・・。

一瞬でこれまでの力関係が崩れたのだ。残酷な見方とは思うが、この省略された「安藤の表情」は北野監督の少年たちに対する慈悲なのかもしれない。もしくは徹底した悪意だったのか。

どちらにしても、壮絶な「人生」「社会」という壮絶なサバイバル戦の始まりを描いたシーンだった。「未だ始まっちゃいない」という心震える名台詞で少しだけ救われる気もするが、やはり「もう始まってる」し、もっと言えば力関係は修復出来ないほど変化してしまっているのだ。我々はそんな事もちろん承知済みだ。

空しい希望に心が洗われる。だからこそ本作は残酷なのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)モノリス砥石 らーふる当番[*] ぱーこ[*]

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