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[コメント] 油断大敵(2003/日)

古き良き邦画を、現代的に良く仕上げた作品ですね。時にこういうのが出されると、ほっとします。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 決して有能でもないし、むしろ娘との二人暮らしの中、ドジの方が多い刑事が、失敗を繰り返しつつも、徐々にヴェテランになっていく過程を、泥棒との関係を通じて描いた作品で、ほんとしみじみ時代の経過を感じさせられる好作。特にどんな役でも器用にこなす役所広司が、むしろ不器用さを主体に演じ、そこに個性的な柄本明を絡めることで、不思議な空間を作り出していた。更に菅野莉央(8歳)、前田綾花(17歳)の娘との親子関係をもそこに出すことで、構成が大変面白いものになっている。

 本作の構成はで面白いのは猫田と美咲になんの接点もないと言う点。だから関川を中心に別々の話が紡がれていく事になるのだが、これが不思議と別の話にならない。関川は娘にも猫田にも、今の自分をさらけ出すので、別々のはずの関係が関川の言葉だけでリンクしていくことになる。そして10年の間に、この三者の関係も少しずつ変わっていき、その移り変わりもしっかり描けていたのが面白いところ。

 人の生き方は変わらないように見えていても、自ずと時は流れていき、関係は変わっていく。娘はこれから人生を始めていくことになるが、一方自分とネコは徐々に人生を終える用意を始めていくことになる。その過程をここではしっかり描こうとしていたし、それは確かに成功していた。

 決して本作は大作ではないし、ドラマ的な盛り上げ方も希薄に思えてしまう。しかし、逆にその淡々とした雰囲気が本作の最大の見所となってる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)tkcrows[*] ナム太郎[*] sawa:38[*] 水那岐[*]

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