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[コメント] メトロポリス(2001/日)

50年前に手塚さんが出した「宿題」に、30年前の答えを出したが‥‥。現代になんとか追いつくために →
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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何人かの方が指摘されているように、描かれている未来の都市像が古い。手塚さんの後期の作品にすら追いついていない。彼が今描けば、全然違った未来を描いただろうと私も思う。

ただ、この作品には新しい要素がひとつある。ロックを登場させたことだ。自分が何者であるかわからない、拠り所を持たない人間として苦悩する彼の登場には大変意味がある。

手塚さんは、半世紀も前に『メトロポリス』で「ある宿題」を出した。しかし、人間を信じた『アトム』では解決できず、『火の鳥』や様々な作品で問い続けてきた。それは、「人間の欲望」によって生み出され、翻弄される「命」として描かれ、愚かな人間の姿として描かれた。

「人間の欲望によって生み出される命」の現代的なテーマは、ロボットではない。手塚さんの作品にも描かれているが、クローンや遺伝子組み換え技術、そして、人工授精などによって「人間そのもの」を創造し、操作することが現実のものとなっている。彼らの苦悩は、ロボットの比ではないはずだ。人類は、すぐにでも判断を迫られている‥‥

この点で、人間であるロックの登場が意味を持つ。しかし、「宿題」に対してティナは自ら死を選び、崩壊させることで答えを出したが、これは30年前の答えだ。ロックは、結局無視されてしまい、世界に向けた問題提起にすら成得ていない。ロックの苦悩を中心に据え、丹念に描くことが、「現代版」のひとつのあり方だったように思う。

半世紀前に手塚さんが出した宿題。人類は50年間放っておいた答えを、一夜漬けで出そうとしている‥‥

(評価:★3)

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