[コメント] 十三人の刺客(2010/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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豪華な俳優陣が一人一人最適な演技をしてこの時代劇を盛り上げている。市村正親がちょっと年齢的に老けているかなあと思ったが、でも松方弘樹なんかは水を得た魚のように、画面では若々しく往年の時代劇の活きのよさを発散しているかのよう。立ち回りも彼は型に嵌まった剣術の美をオーラしており、様式美を感じさせてくれる。
役所広司は意外や受けの演技で、他の12人の刺客を目立たせる。相変わらずの重鎮な演技で、抑制した演技が光る。山田孝之もアイドルから完全に離れた演技で、彼も役者として本望な出来だろう。伊原剛志も彼の風貌をうまく活用した強き武士像を見せてくれた。
伊勢谷友介は結構設け役で、彼のイメージを払拭するいい演技だった。 また沢村一樹、古田新太、六角精児も自分に与えられた役柄の意味をよく理解し、その他の刺客者にならない的確な演技で楽しませてくれた。惜しむらくは高岡蒼甫があまり目立たず、死ぬ瞬間に彼を確認した程度の出番でちょっと気の毒かな。
その他大御所の平幹二朗松本幸四郎の画面を引き締める大時代的な演技もやはりこの映画では必要であった。しかし何と言っても筆舌すべきは、アイドル顔した無垢な殿さまを稲垣吾郎が怪演をしてしまったことに尽きるだろう。
最初はセリフもちょっとおぼつかない感じだったが、そのうちの乗りに乗って狂王の内面まで吐露してしまう。実際の戦闘を経験していない明治前の江戸の時代と、太平洋戦争後65年を過ぎた現代とを不思議とリンクさせていた。この映画の現代的意義もまさにそこにあるのではないか。
50分ほどの殺戮シーンはホント殺しても殺しても人が立ち向かってくる展開で、見ている方も疲れてきましたが、大量の人間を殺戮するには新しい刀が必要であるという見事な描写もリアルで、誠に本格的な時代劇であった。
それにしても襖と言い美術が時代劇全盛時代に戻ったかのような豪華さで、この映画の質を大いに高めている。この映画の基礎部分には映画関係者のみなぎる努力があったものと予想されて嬉しかった。秀作である。
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