「本当の化け物を見せてやるわ」

トイレで下着を脱いだ後、席に着き、若い男に股を開いて見せるチエコこそ、イニャリトゥ監督そのものである。なぜそんなに「化け物」になりたがる？　自分は「人」とは違うと思っているのか？　思い上がった態度だ。たいした映画でもないのに。

まず、なぜ必要以上に時間軸をいじるのか。簡単である。ひとつの国を長く見せすぎると、この映画が３つか４つの国を「無理矢理」繋げたものであることが、バレてしまうからだ。だから、はやいうちからザクザクッと見せて、この映画においてすべての人間は繋がっている、同じ世界に存在する、と「錯覚」させなければならなかった。そもそも、日本はほとんど関係がないのだ。銃の所有者？　ハンティングが趣味の日本人が、モロッコのガイドに譲った？　銃の規制に関して知識はほとんど無いから偉そうなこと言えないけど、少なくともリアリティの観点から言えばそれは「ナイ」よね。しかも・・・まあ、誇張された日本人についてはいまさらって感じか・・・だいぶ、マシなほうだけど・・・でも一言。

いまどき、"September"で踊るか？

ストーリーに関して言えば、展開が読めてしまうシーンが多かったように思う。例えば・・・息子の結婚式帰り。ほろ酔いの甥に車で送ってもらう。どうせ、事故るか、検問で問題起こすかだろ・・・やっぱり。帰ろうとする間宮刑事。いったん引っ込むチエコ。裸で出てきたりしねえだろうな・・・やっぱり。そういうの、どっかで観たことあるよ。

まだ文句がある。モロッコの兄弟の、射撃が巧くて警察に応戦していた弟が、兄が撃ち殺された（？）途端、ライフルを叩き付け、警察に投降するシーン。監督的にはあれで「非武装、非戦」を訴えたかったんだろうが、銃撃戦を激化させたのは、そもそもあの弟だろ。応戦しなければ、犠牲は出なかった可能性もあるのに。それがいよいよヤバくなってきてからようやく白旗あげるってのは、いくら子供でも納得いかないな。

最後のほうは、ほとんど坂本龍一の「美貌の青空」のPV状態だったしね。