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[コメント] 消えた天使(2007/米)

久々にサイコスリラーで緊迫感を味わえる作品に出会えたが、錯綜する性犯罪と、その追い手は最後までぎくしゃく。「後味」からしてみれば一定の快感を味わえるだけに、細部への詰めが甘かったか。ラウ監督の描く「怪物」は本当に病的だった。
ナッシュ13

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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事件そのものや犯人ではなく、「怪物」に侵食されていく追い手(ギア)へのアプローチを試みたサイコスリラーだった。「なるほど、そういう手できたか」と、勝手に頷きながら鑑賞した。

冒頭ではバベッジが、そしてエンディングではアリソンが「怪物」について述べている。怪物とはずばり怪物で、頻発する性犯罪の末恐ろしさそのものだろう。同僚は一歩引いて業務をこなしているようだったが(上司=レイ・ワイズの態度に表れている)、彼は1つの事件を機に怪物に憑かれ、そして自らも怪物に成り果ててしまう。そこで、新たに起こる事件が少女の失踪事件。

この軸となる事件の捜査が進行せねば物語は進まず、バベッジは苦悶するだけなのは分かる。しかしアビゲイルの事件や他の少女(アヴリルのほう)の存在、そして多くの性犯罪者が登場する中では、どうしても失踪事件の描写が曖昧なものだし、鑑賞している側にしても要所で整理が必要だった。終盤になるにつれ、バベッジはますます病的になるので尚更である。性犯罪を取り巻く数多くのエピソードが、パズルのようにきちっと嵌ればラストの後味も、もっともっと悪いもの(ある意味で快感)になったのかもしれない。ちなみに怪物予備軍になったアリソンの存在もまた、「後味」には欠かせない要素となっている。

置き去りにされたエピソードがあるなど納得できない点もいくつかあるが、数年に1度こうした新作サイコものを見てしまうと燃えてしまう自分がいるのもまた事実なわけで。

(評価:★3)

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