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[コメント] フルメタル・ジャケット(1987/米=英)

クソ地獄から這い上がろうとする者、這い上がろうとしない者。ここで言うクソとは凶器を与えられた人間達だ。嘆き悲しむ前に、そのクソを排除せねば…。話はそれからだ。でも、クソとクソがぶつかり合えば、結局二倍のクソになるだけ。…という唸り声。
ナッシュ13

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







前半後半、共に銃撃で締めくくる。ここで、本来のタイトルの意味(真意)を知ることとなる。

反戦映画に変わりは無いが、これ程までに、殺傷させる為だけの武器(つまり銃器)を忠実に描いた作品も珍しい。これは戦争以外においても充分に言える事。凶器を与えられた人間達(人間そのものが凶器だが)の人間模様からも伺える。キューブリックはそのような人間をとことんクソだと言い張り、その結果論を至極極端に描いている。前半30分で強烈なイメージを植え付けさせ、鑑賞者をベトナムへ同行させた…としか言い様が無い。

「悲劇」には遠からず近からずで、それよりも、余計な感情論を徹底的に枠の外へと追いやっているのが良い。クソとクソの衝突を、あろうことか極論として描いて魅せている。いや、これが現実なのだろうが…。

この痛烈な皮肉でチャップリンの2作品を思い出した。1つは『チャップリンの殺人狂時代』。この作品では人間達への皮肉が語られる。ラストシーン、チャップリンの大量殺人への皮肉(警告)のセリフを思い出す。そして2つ目は『担え銃』だ。新兵訓練→戦場という展開は、この作品と非常に良く似ている。語られるのは戦争への皮肉。これは観ればわかる。ドタバタ喜劇に込められたチャップリン最大級の皮肉…。まぁ流石に、あのオチのようにはいかないが…。

キューブリックの映画だということを、まずは脳内から他所に置いておき、充分に一作品を集中しながら鑑賞できたのは本当に良かった。鑑賞中に余計な概念を抱くのは嫌だから…。だからこそ、このような評価が下せたのだと思っている。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ナム太郎[*] ジャイアント白田

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