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[コメント] フルメタル・ジャケット(1987/米=英)

ビデオのジャケットの写真から、血みどろの戦場を描いた映画かと思って、覚悟して観たら別の方向から攻撃された。言葉だけでこんなに嫌な気分になった映画は初めて。(2002.5.8レビュー書き直し)
空イグアナ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







……と、ケチをつけておきながら、内容について考察。キューブリックの映画って、意味が分かりにくかろうが、退屈だろうが、何か、心に響いてくるものがあるんだよな。

このビデオのジャケットはネタバレだと思う。だって映画は狙撃兵の顔を隠しているのに、スチール写真では、狙撃兵の姿を映しているんだから。(僕は、この映画をビデオで見たんだけど、「ああ、狙撃兵はあの写真の少女か。」と予想がつきました)

それはともかくとして、もっと根本的なところに疑問が沸く。

……何故、顔が隠されているのだ?

顔を隠すことによってどんな効果があるか。意外性?狙撃兵が少女であることが、そこまで意外か?もっと驚くどんでん返しは掃いて捨てるほどある。

いやいや、意外ではない、というのは映画の展開としての話だ。これが現実の戦争だったらどうだ?相手が少女と知ったら、やっぱり驚くだろう。

おそらくキューブリックは、観客に、実際に戦場にいるような体験をしてほしかったはずだ。現実の戦場では相手の顔が見えないことは珍しいことではない。だから顔が隠されているのだ。

顔が隠されていることによって、僕たちは、ジョーカーたちと同じような体験をすることになる。姿の見えない狙撃兵。回り込んで攻撃をしかける。振り返る狙撃兵。このとき初めて相手が少女であることがわかる。

さて、ここで、あなたはどうするだろう。僕なら、やっぱり驚くかもしれない。しかし、かといって撃つのを躊躇していたら、こちらが撃たれる。戦場では老若男女を問わず、躊躇せずに相手を殺さなくてはならない……と、キューブリックは、こういったことを観客に感じてほしかったんだと思う。

この映画は前半と後半でかなり雰囲気が違う。そのため、前半だけの方がよかったとか、後半だけの方がよかった、という意見も多い。でも、僕は両方そろっていてほしい。どちらが好きか、と聞かれたら、双方のクライマックス(パイルが教官を撃ち殺して自殺するシーンと、狙撃兵との対決のシーン)が好きだ、と答える。

この映画には、こんな意味が込められているように思えるのだ。「パイルは誰の目から見ても、狂っていた。では、戦場にいる兵士たちはどうだ?躊躇せずに人を殺せるという点では一緒ではないのか?」

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ねこすけ[*] さいた 緑雨[*]

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