[コメント] ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ(1997/米)
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彼らが数分で考え出した、アルバニアの少女が大統領に小麦の束を渡すシーンや、モッツが企画した大統領の演説に、女性たちが涙を流して感動するシーンなど、とても面白かった。不快感を感じてもおかしくないのだが、自分も普段プロデューサーが作り出す感動を思いっきり享受しているから笑える。
あらゆるドラマにはプロデューサーが考えだした「感動」がつきもので、観る側は自分の意志で感動したと思っても、実際は感動を押しつけられていることはよくある。それがドラマや映画などではない実話であっても、人が伝えていくうちに何らかの演出が加わり、私たちは誰に感動させられているのか分かりもせずに簡単に感動することに慣れている。新聞に載る美談すらどこか怪しい時があるし、オリンピックの時期などはうんざりするくらい「感動しなさいオーラ」がそこらへんに充満している。
もちろん、安っぽい作品に、まんまと感動してたまるかと意地になる時もある(なぜ安っぽいと感動したくないのかは不明)。だが、適度にきれいな映像、勝手に盛り上がる音楽、そして、誰かが考えた作り話に、「これはB級」とわかっていながら感動する時もある。
それはたぶん、人がどこかで「騙されたい」と思っている部分があるからだろう。マジックなどをわざわざ見に行く人間だっているのだから。何か胡散臭いとわかっていながら、いつの間にか自分の感情が流されていることに気づく時の諦めにも似た心地よさ。人それぞれだろうが、私にはそういう瞬間がある。大統領の芝居がかった演説や、大統領選の時のパフォーマンスなどを思い出してみると、もしかしたらアメリカ国民も同じかも知れないなどと、馬鹿な考えがふと頭をよぎった。
この映画で、政治やメディアよりも風刺されているもの、それは自分たち大衆なのかもしれないと私は勝手に思ったので、最初に訪れた不快感をさっさと忘れて楽しむことができた。ワッツというへこたれないプロデューサーも、個人的には面白かった。ただ、さすがの「名プロデューサー」も自分の死に方までは演出できなかった、というよくあるオチはやめてほしかった。
それと、アメリカの象徴とまで言われたウィリー・ネルソンのことについて誰もコメントしていないのが淋しいといえば淋しい。そういう私も、彼について言いたいことは何もなかったりするが。
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