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[コメント] ガープの世界(1982/米)

ガープの人生がまるで自分の人生であるかのように思えてくる。
prick

 ビートルズで一気に引き込まれ、終盤でガープが想い出に浸る頃には僕の頭の中でも映画のシーンの断片が駆け巡り、このまま映画がいつまでも続けばいいのに、なんて気持ちにさせてくれる。感動系のストーリーという訳ではなく、悲しみは漂い、攻撃的な部分さえあるにも関わらず、見終わった後でとても気持ち良くなれるから不思議だ。不思議と言えば、ガープの人生がまるで自分の人生であるかのような錯覚にすらおちいるのも同上。

 映画、原作、共々に名作と言って差し支えないと思う。この映画、そして、ジョン・アーヴィングが、いささかとはいえ僕の人生と接点を持ったということは、とても幸せなことだ。ありがとう。

 閑話休題。

 アーヴィング曰く、「小説は長ければ長いほど良い」のだそうだ。さすがはディケンズに慣れ親しんで育った作者といったところか。だが、長いストーリーを飽きさせずに完結させるのは難しく、助長なだけの小説・映画が多いというのも事実。

 もちろん、氏にそんな心配は無用。これでもかと押し寄せる山場の数々。一つのエピソードで一つの小説が書けてしまうほどなのに、それを惜しげもなく次々に披露してくれるのだからたまらない。面白くもないお話を垂れ流し、テレビで偉そうにくだをまいている「自称作家」どもに見習わせてやりたいぐらいだ。

 力業な部分も多少はあるが、時にウィットに、時にシニカルに、時にアングリーに、時にハートフルに、人間の愚かさや素晴らしさをユーモアたっぷり描く、氏の小説は素晴らしい。もっと長くていいぐらい。物語がエンドに近づくにつれ、読了するのが惜しくなってくる。

 ご存知のように氏は気むずかしい人で通っている。だが、その実とっても優しくて、人間が好きなのではないかと思う。そうでなくては、このような作品は書けないはずだ。いささかシニカルに人間の愚かさを描く部分にも、愛が在ってのことなのではないかと思う。(だが、人を小馬鹿にしたくて作家になったという可能性も否定できないので、やっぱりこの人は恐ろしい)

 「ガープ」に生命の息吹を吹き込んだ氏に敬意を表しつつ、

 無意味に長く凡庸なレビューを終わります。

----- 蛇足 -----

 日本語翻訳版の発売は迅速に行うべき。

 ペーパーバックで読むには骨が折れすぎる。

 訳者泣かせっぽくはあるけど、それにしても遅い。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ジャイアント白田[*]

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